電気化学反応により、アパタイトとコラーゲンの質量比を傾斜させた組成の複合体の作製条件を明らかにしてきた。最終年度では、コラーゲン線維のリシン残基を起点とした糖鎖修飾技術を検討した。一方、コラーゲン分泌を可視化させる技術においては、繊維芽細胞におけるコラーゲン分泌経路を明らかにした技術を基に、骨芽細胞や肝細胞などへの適応を検討した。コラーゲンへの糖鎖修飾では、リシンをチオール化した後で、チオール―エン反応によるグリコシル化の二段階で行った。コラーゲン線維へのチオール基の導入は、X線光分光法により検討し、硫黄のS2pに特有なピークを168eVに検出した。チオール化したコラーゲン線維の変性温度は、チオール化していないコラーゲン線維とほぼ同程度であった。また、引張強度への変化はなかった。アリル-D-グルコピラノシドによるグリコシル化を行った結果、変性温度の低下が生じた。これは、グリコシル化によるコラーゲン線維同士の結合が弱まったためと考えられる。一方で、GFPやmCherryでタグをつけたコラーゲンの分泌経路の可視化技術では、細胞内における酵素反応による切断・修飾によるペプチドの排出経路などを明らかとしてきたが、骨芽細胞や肝細胞でも同様の可視化が可能であることを明らかとした。また、当該技術を用いて、マウスの線維芽細胞の株化にも成功した。これらの成果は、線維性疾患に関するin vitroでの創薬ツールとなることが期待できる。
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