研究実績の概要 |
①光捕集アンテナ色素系の構築:天然の光捕集アンテナを構成するクロロフィル分子は、軸配位を通じて精密に配向方向を制御されて会合構造を形成していることから、効率の高いアンテナ系を構築するためには、相分離界面においてポルフィリンそのものの配向方向をコントロールする必要がある。5,15位に親水鎖を、10,20位に疎水性液晶鎖を持つ亜鉛ポルフィリンを核とする星形ブロック共重合体について検討したところ、ポルフィリンの直近に1,2,3-トリアゾールを持つものでは軸配位の影響が大きく、希釈溶液中でも強固な会合により凝集体を形成することから、薄膜化した際のナノ構造の規則性と再現性が低く、安定した垂直配向シリンダー構造の形成が困難であることが判った。このためポルフィリンとトリアゾールの距離を離し、軸配位を抑えた構造に変更したところ、凝集性を抑えて安定的に垂直配向シリンダー構造を形成することが可能となった。
②光捕集・電荷生成能の評価:光捕集能を向上させるためには、単位体積当たりのポルフィリン密度を向上させればよいことから、スメクチック層間距離の短縮による膜厚方向のポルフィリン密度の増大について検討した。液晶側鎖のリンカー長を短縮することにより、垂直配向シリンダー型の相分離構造の規則性を保ったままスメクチック層間距離を短縮することに成功した。しかしながらPEO鎖の重合度を一定にしたためにPEOドメインの密度が増加し、正孔キャリアであるヨウ素の拡散が阻害され、薄膜の光電流応答における電流値が低下した。PEOの重合度の最適化が必要であることが示唆された。
③側鎖に導入した液晶半導体の分子設計:PDIを液晶メソゲン部に導入したブロック共重合体の薄膜中でのナノ構造は通常のFlory-Hugginsの相図に近い挙動を示し、スフィア型の相分離構造を形成することから、今後体積分率の最適化が必要であることが判った。
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