研究課題
本研究では、フラーレン磁性体におけるフラーレン分子上の電気双極子に焦点を当て、磁性と誘電性の相関現象を解明すること、誘電性の長距離秩序相を探索し、長距離秩序相における電気磁気効果を明らかにすることが目的である。本年度は、従来から研究を進めてきたTDAE-C60を中心に研究を行った。本年度から大学院生が本研究に参加したため、単結晶試料の合成から始めた。良質な試料が得られている。また、本年度の主な課題として、強磁場下で誘電率測定を行うための装置を開発した。超電導マグネットは、所属のPPMS装置を用いた。当該年度の予算から、低周波でのインピーダンス測定を可能にするための計測器を得て、これをPPMS装置へ実装した。これにより、2Kから400Kまでの温度領域、磁場±9 T、周波数10μHz-32MHzにおける広帯域磁場下誘電率測定が可能となった。また、スペインで開催された磁性の国際会議にて、TDAE-C60の磁性/誘電性に関する報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
本年度から大学院生が本研究に参加しており、試料合成からスタートしているため、試料の基礎物性に関する測定では、少し計画から遅れている。一方、当該年度の主な課題である広帯域磁場下誘電率測定装置の開発については、計画通り、立ち上げに成功しており、低温強磁場での誘電率測定の試験を行った。
今後は新規に合成したTDAE-C60における磁場中誘電率計測を行い、結晶構造と磁性、誘電性の相関をより詳細に検討する。また、TDAE-C60における誘電性の機構に関する成果を基礎にして、新規なフラーレン磁性/誘電性共存物質の探索を行う。すでに、巨大な誘電応答が観測されているアルカリ金属をドープしたフラーレン(AxC60)における誘電率を広帯域誘電率測定装置を用いて観測する。その他には、今後より強磁場での測定が必要となる可能性もあるため、所有の12テスラの超電導マグネットへの実装を始める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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