研究課題/領域番号 |
15H03530
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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研究分担者 |
水野 清義 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (60229705)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ材料 / グラフェン / マイクロ・ナノテバイス / 結晶成長 / 触媒・化学プロセス |
研究実績の概要 |
グラフェンは原子レベルの厚みしかない二次元原子膜材料であり、その薄さにもかかわらず、高い大気安定性と極めて高いキャリア移動度を示す。光透過性にも優れ、機械的に柔軟であることから、今後のIoT社会にとって有用な材料になることが期待される。しかしながら、単層グラフェンはバンドギャップをもたず半導体素子への応用が困難なため、垂直電場によってバンドギャップを開くことができる二層グラフェンに期待が集まっている。本研究では二層グラフェンを均一に、かつ大面積に合成する方法を開発するとともに、その応用を展開することを目的として研究を行っている。 前年度の研究で、CuとNiの合金薄膜を金属触媒として用いたCVD法により二層グラフェンを優先的に合成できることを見出している(93%の被覆率)。しかし、この二層グラフェンには、半導体応用で重要となるAB積層だけではなく、回転積層も共存していることが分かってきた。そこで、当該年度は、合成温度や水素濃度などのCVD条件、Cu-Niの触媒組成比などを系統的に検討し、AB積層した二層グラフェンの比率の向上を進めた。その結果、二層グラフェンの積層構造に与える重要な因子を明らかにすることができた。 さらに、二層グラフェンの有するユニークな二次元ナノスペースに着目し、層間への分子のインターカレーションを試みた。これまでのほとんどの研究では機械剥離法で得られた複層グラフェンでインターカレーションが行われている。しかし、この機械剥離のグラフェンは層数が不均一で、膜が非常に小さく、有用ではなかった。本研究では、CVDで合成する大面積、かつ均一な二層グラフェンを用いる点で、これまでの研究を凌駕している。さらには、従来の二層よりもはるかに高い性能のシート抵抗と光透過率を得ることに成功している。この結果は二層グラフェンの透明電極応用を強力に推し進める成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サファイア上のエピタキシャルCu-Ni合金触媒を用いるという独自の手法を用いることで、二層グラフェンの選択成長は順調に進展している。実際、二層の均一性は世界トップレベルである。また、CVD条件等が積層構造に及ぼす影響も明らかにしつつあり、着実に研究は進んでいる。この合成の検討に加えて、当初の計画にはなかったCVD二層グラフェンへのインターカレーションによる機能化への展開も広がっており、順調な進展であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
二層グラフェンの選択成長は十分なレベルに達したが、その積層様式をさらに制御していく必要があると考えており、当該年度に見出したCVD条件の様々なファクターを制御して、AB積層の割合をさらに向上させていく計画である。さらには、ダブルゲート・トランジスタの作製と評価を行い、CVDで合成される大面積の二層グラフェンを用いたトランジスタ応用を実現していく。上記に加え、当該年度に新たに見出された二層グラフェンへのインターカレーションという研究シーズも発展させていきたいと考えている。
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