研究課題
究極的な二次元原子膜材料であるグラフェンは、高いキャリア移動度に加え、フレキシビリティや高い光透過性などを有し、今後のIoT社会にとって極めて有望な材料である。グラフェンはCVD法で大面積に合成できるようになっているが、触媒として広く用いられているCuホイルで得られる単層グラフェンはバンドギャップを持たず半導体素子への応用が困難であった。そこで、本研究では垂直電場によってバンドギャップを開くことができる二層グラフェンを均一かつ大面積に合成する方法を開発するとともに、応用研究を推進することを目的とした。検討の結果、サファイア上に堆積したCu-Ni(111)合金薄膜を用いることで、二層グラフェンを93%もの高い割合で合成に成功した。この合成した二層グラフェンには、半導体応用で有効なAB積層に加え、回転積層も約3割存在することが明らかとなった。そこで、当該年度は様々なCVD条件を系統的に検討し、AB積層の割合を飛躍的に向上させる方法を見出すことができた。この新たな知見は二層グラフェンの成長機構と密接に関連しており、今後さらに詳細に研究を推進する方針である。上記の二層グラフェンの合成に加え、二層グラフェンの層間への分子のインターカレーションを試みた。従来は剥離法で得られた複層グラフェンでインターカレーションが行われていたのを、本研究では大面積で均一性に優れたCVD二層グラフェンを用いた。二層グラフェンの積層構造を制御し、MoCl5分子をインターカレーションすることで、83Ω/□という非常に低いシート抵抗を得ることができた。この低抵抗状態が大気中でも安定であることも見出し、有機太陽電池の透明電極としての可能性も提示することができた。上記の二層グラフェンの合成とそれを用いたインターカレーションに関する研究はオリジナリティが高く、かつ今後の産業応用も期待される優れた成果であるといえる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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