研究課題/領域番号 |
15H03533
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
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研究分担者 |
秋山 元英 中央大学, 理工学部, 助教 (90467697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロチューブ / 交互積層 / 生体機能材料 / 白金ナノ粒子 / バクテリア / ウイルス |
研究実績の概要 |
近年、有機系ナノチューブの開発に注目が集まっている。研究代表者らは多孔性ポリカーボネート(PC)膜を用いた独自の鋳型内交互積層法により、中空シリンダー構造の蛋白質ナノチューブを合成し、その内孔空間を利用した様々な機能発現(分子捕捉など)に成功している。本研究は、これまでに蓄積してきた知見を大きく発展させ、“水中で自走する蛋白質マイクロチューブ”の創製に挑戦する。従来の発想を転換し「内孔に酸素バブル噴射能を持たせた自走型チューブ」を合成する。さらに、これまで未着手であった外表面を利用して「動きながらウイルスやバクテリアを捕集できるマイクロシリンダー」として完成する。 ・白金ナノ粒子(PtNP)と酸化鉄ナノ粒子(Fe3O4NP)を有する蛋白質マイクロチューブの合成と自走方向の制御:最内層にPtNP、階層成分にFe3O4NPを導入した蛋白質マイクロチューブを合成した。その中空管構造を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡により観察。チューブが過酸化水素水溶液中で自走する様子、磁石によって進行方向を自由に調節できる様子をハイスピードカメラ装着倒立型光学顕微鏡で観察した。 ・グルコースオキシダーゼ(GOD)を有する蛋白質マイクロチューブの合成と酵素活性:階層成分にGODを導入した蛋白質マイクロチューブを合成し、その構造と酵素活性の相関を明らかにした。GODを最内層に有するチューブが高い酵素活性を示すことがわかった。 ・インフルエンザウイルスを捕捉できる蛋白質ナノチューブの合成:最内層にフェチュイン(シアル酸含有糖蛋白質)を導入した蛋白質ナノチューブを合成し、それがインフルエンザウイルス(H1N1型)を効率よく捕集できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画に従い実験を遂行し、2016年度の目標であった「磁力による自走方向の制御」および「グルコースオキシダーゼを有するナノチューブの合成と酵素活性の解明」を達成することができた。さらに、当初3年次に予定していたインフルエンザウイルスの捕捉にも成功した。ナノチューブの最内層にフェチュイン(シアル酸含有糖蛋白質)を配置すると、ウイルス表面のスパイク蛋白質であるヘマグルチニンが糖鎖末端シアル酸に結合するため、ウイルス粒子がチューブの内孔空間にトラップされた。本成果をまとめた論文は、日本化学会速報誌 Chem. Lett. に掲載され、Editor's Choiceに選ばれた。さらに、日本経済新聞(2017年2月15日版)でも紹介された。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、最終目標である蛋白質マイクロチューブによるバクテリア捕集に挑戦する。蛍光蛋白質(GFP)を発現する大腸菌を蛋白質マイクロチューブの水分散液に加え、チューブ外表面に大腸菌を捕捉させる。自走しないマイクロチューブに比べ、自走するマイクロチューブが大腸菌を効率よく捕集できることを定量的に示す。 さらに捕捉の選択性を上げるため、外表面にアビジン蛋白質を配置し、アビジン-ビオチン結合により外表面にのみビオチン化合物を固定化する。これによりマイクロチューブの外表面に所望の機能を持たせることが可能となる。 3年間で得られた成果を取りまとめ、「自走する蛋白質マイクロチューブの合成と機能利用に関する基礎化学」を確立する。
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備考 |
研究代表者が国際会議および中央大学で受賞2件、研究協力者(大学院生)がCSJ化学フェスタ2016および中央大学で受賞2件
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