本研究では、室温原子層堆積法を用いて従来未踏であった複数の酸化物が混在する複合酸化物ナノ薄膜の製造方法を確立することを目的とした。研究題材としてアルミナとシリカの複合酸化膜であるゼオライト膜の室温製造を研究し、アルミプリカーサーであるトリメチルアルミ(TMA)とシリコンプリカーサーであるトリジメチルアミノシリコン(TDMAS)の競合吸着を評価し、表面濃度の制御方法の確立を狙った。 多重内部反射赤外吸収分光法を活用して、TDMASを部分吸着させた表面に、TMAを吸着させる試験を行った結果、TDMASの初期被覆率を変化させることで、アルミとシリコンの吸着比を制御できることを明らかにした。 この技術を活用し、色素増感太陽電池の酸化チタン光電極にアルミとSiの濃度比を1:1に制御した人工ゼオライト膜を被覆させることで、色素の吸着量を増加させ、短絡電流密度促進により発電効率を向上できることを明らかにした。 薄膜としての人工ゼオライトについて、Si模擬基板に形成してイオン吸着能力を評価した結果、食塩水中でNa吸着能があることを光電子分光測定から明らかにすることができた。また、Kとのイオン交換吸着も可能であることが分かり、自然にあるゼオライトとほぼ同様のイオン吸着メカニズムを持つことが示唆された。再生可能な原子力汚染フィルター膜の設計に必要なデータを習得できるところまで到達できた。 複合酸化膜の超格子化の試みとして、アルミナシリカ/シリカの超格子薄膜の試作も行い、単純なアルミナシリカ膜に対して、イオン吸着能が高いことが分かり、超格子化の工業有用性の一端を示すデータを取得できた。
|