研究課題
本研究では炭素の結晶性と細孔活性度の両立を図るために、応力等の外部環境により特性変化する積層グラフェンエッジで囲まれた環境感応π電子ナノ細孔からなる、多孔質材料の創製を目指す。高活性なπ電子面で構成されるπ電子ナノ細孔では、従来の炭素細孔内では実現できない革新的な化学的、電気的、光学的、そして磁気的機能の発現が期待できる。カップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)を用いて細孔サイズや特性の異なるπ 電子ナノ細孔を有した構造体を得る。酸化によりCSCNTの表面にグラフェンエッジが露出するように調整し、形状制御を行った。今回はHummers法によりCSCNTの開裂およびカップ分離を試みた。その結果、条件によりCSCNTの開裂によりエッジ部分が多数露出したグラフェンナノリボン積層体が得られた。また、CSCNTのカップ分離により得られた物質に関して構造解析等をTEM、SEM、Raman等により行った。これらによる分析により局在π電子空間構造を形成できているかを実験的に確認し、π電子がナノ空間内にどのように分布するか併せて確認した。触媒能を確認するために水素発生能力を検討した。その結果、グラフェンなどよりも優れた特性が得られたが、白金触媒を用いた場合には及ばない結果となった。そのため、ダイカルコゲナイドナノフレークをナノ空間内に担持させた試料を作製した。また、CSCNTそのものに白金触媒を担持させた試料も作製した。オーバーポテンシャルは白金触媒担持CSCNTが最も優れ、ダイカルコゲナイドナノフレークを担持させたものに関してもπ電子ナノ空間構造体よりも優れた結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
カップ積層型CSCNTのエッジ部を活用したバルク体の形成に成功し、水素発生能の計測に成功し、計画通りに進展している。また、グラフェンナノリボンに関してはCSCNTの開裂によりエッジリッチなグラフェンナノリボン積層体が生成できる条件を見出した。π電子空間の触媒能に関してはダイカルコゲナイドナノフレークや白金ナノ粒子を用いることで大きく改善できることが分かり、π電子空間内での触媒の安定性を検証しているところであり、順調に進捗している。
おおむね計画通りに進行しているので、π電子空間の効率的な形成手法の確立を行う。また、電気化学反応の効率的な進行のために有効な触媒の担持などを行っていく。また、実使用での熱的安定性の確認のための試験も行っていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Carbon
巻: 107 ページ: 217-224
https://doi.org/10.1016/j.carbon.2016.05.069