研究課題/領域番号 |
15H03538
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
馬場 則男 工学院大学, 情報工学部, 教授 (80164896)
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研究分担者 |
馬場 美鈴 工学院大学, 付置研究所, 研究員 (80435528)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子線トモグラフィ / 電子顕微鏡 / 逆問題 / 画像再構成 / 情報欠落問題 |
研究実績の概要 |
提案の新たな電子線断層再構成法(濃度量子単位を用いた非線形離散濃度階調再構成法)に大きな進展があった。本手法は従来からの逆投影法(医療用X線CTで用いられる)に代わる新たな手法として考案した。理由は、電子線断層法(CT法)では、試料傾斜角度にかなりの制限があり(±60°~70°)、また、電子線による照射損傷を抑えるため、撮影方位数(撮影枚数)を減らすなど、逆投影法が使える条件(全方位に細かな角度間隔で撮影できること)にないからである。新たな再構成法は上記の問題点を克服してきたが、パラメータをどうセットするかの問題点があった。しかし、今回、大きな進展があった。すなわち、新手法を採用し、異なる法則から、近似ではあるが疑似断層像を自動生成し、投影データは自動生成の中から主に最適な断層像を選択する判定にのみ利用するとした改良である。これにより、応募の研究計画でも書いた‘試料傾斜による視野外混入の問題’にも対処でき、通常の切片試料にも応用できる見通しが出来た。 もう一つの計画の、オンライン電子線CTシステムの完成に大きく近づけた。このシステムに欠かせないスポットオートフォーカスの信頼性を大きく向上させたからである。電子線CTでは試料を高角度に傾斜するため、傾斜軸上付近とこれに離れた撮影視野では焦点がかなりずれる。従ってスポットオートフォーカスによって、傾斜軸上付近を常に焦点合わせする必要がある。既に独自に考案した‘高精細自己相関関数’と呼ぶ、画像の鮮鋭度を測る方式を採用しているが、どのような試料であっても、また撮影倍率に関わらず常に正確に動作する汎用性の高い方法を見出した。それは、像の焦点が合っているほど自己相関関数のピークのプロファイルが鋭くなるが、そのプロファイルの傾きを高精度に測れるようにしたことである。 これらの成果によって、実験実証に確実に進めることが出来るようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)本手法(非線形離散濃度階調再構成法)の改良について、 研究実績の概要で述べたように、本再構成法の最適化の方式を基本から改めた結果、それまでの問題点が解消され、現在のところ順調に推移している。すなわち、断層像の再構成演算における最適解を求める方式として、‘総当たり方式’に切り換えた。膨大な演算量を避けるため、低解像度の近似断層像から徐々に解像度を上げる方式を採用して実用的な方法で行っている。 2)オンライン電子線CTシステムの試作 これも研究実績の概要で述べたように、システムの試作で残っていた開発課題のスポットオートフォーカスについて、汎用化の目処が立ち、順調である。観察試料が変わったり、撮影倍率が変われば様々な画像の様相が変化するため、局所的な画像を対象とするスポットフォーカスの汎用化はこの分野では難しいとされてきた。しかし、今回、中心部の自己相関関数を使って、鮮鋭度を正確にしかも高速に、更にノイズに影響されずに測る方法を見出した。この計測法と、電子レンズの制御を組み合わせてスポットオートフォーカスを実現した。以上からシステムに必要な開発課題は全て基本終えられたので、順調な推移である。 3)試料準備について、 本再構成法の検証実験には、界面、表面構造が重要な試料が適している。このために、所属機関内のプロジェクト研究で共同作製されたエコマテリアル薄膜積層デバイス(TiO2/Ti/炭化層/生分解性樹脂、など)を取り挙げ、本研究用にサンプリングすることが出来るようにした。既に予備的オンライシステムによるCT実験を行って、試料として使えることを確認している。また、その材料の切削時の厚さを変えることで、電子線ダメージによる形状変形の程度を変えることが出来ることも確認した。これによって、その場CT実験の試料としても使える可能性が出てきた。これらの事から試料準備も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
実用に近づいた本再構成法の実証実験に入れる段階に至り、また、オンライン電子線CTの試作システムもほぼ実験に入れる段階に近づいた。しかし、まだ開発段階の予備実験的側面があるため、実験を促進するためには、少し多めの実験作業要員の確保や、実験手順のマニュアル作り、使用する電子顕微鏡自体のメンテナンスなどを早々検討する。
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