本研究で独自に開発を進めてきた断層再構成法である“濃度量子単位を用いる非線形離散濃度階調再構成法”の実用レベルの手法が完成した。ここで強調すべきは、“視野外投影像問題”にも対応できるように改良したこと、また、何故、この再構成法で“情報欠落問題”が解消し、少ない投影像枚数でも再構成ができるかの理論的理由を明らかにしたことである。ここで、視野外投影像問題、とは、実際の試料の傾斜角度が大きくなるにつれ、傾斜無しの撮影視野の外から対象以外の投影像が入り込み、断層像再構成に偽像をもたらす悪影響のことである。また、情報欠落問題、とは、試料傾斜角度が±70°程度が限界のため要は真横の投影像が得られず、その結果、偽像が大きく断層像を劣化させる問題である。 本再構成法では、断層像の濃度を表すのに“濃度量子”と呼ぶ濃度階調の単位を多数用いて、それを必要な位置に必要な数積み重ねて再構成する。量子数は線形理論から投影像データより決まる。再構成は、本来、傾斜投影像シリーズとの誤差が最小となるように断層像を作ることであるので、その有限個の量子を投影像シリーズとの誤差を最小にするように最適に配置すればよい。この方法を考案した。 明確な界面をもつナノ粒子や積層半導体デバイスなどに応用し、その界面が、ほぼ偽像なく再構成されている。これらの実験の半数は、昨年度にほぼ完成したオンライン電子線CTシステムを使って行ったが、更に本年度、オートフォーカス、投影像シリーズの位置合わせ、の各機能を高性能・高機能に改善した。位置合わせ法では、傾斜角度間隔が通常より5倍から10倍(10°~20°)に広げた少ない枚数の投影像であっても正確に行えるようにさらに改良した。これにより、撮影時間が大きく短縮でき、動的“その場”3D解析に応用できる基盤整備ができた。
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