本年度は、空孔形態の制御と粒子外部材料の中空化について検討した。さらに、FDTD理論計算による紫外線強度分布と空孔位置の関連性を調べ、空孔位置の予測可能性について検討した。 (1)空孔形態の制御:光照射の強度・時間・波長と空孔の大きさとの関係と空孔位置の制御技術を組み合わせれば、2つ以上の独立した空孔を持つ中空ナノ粒子が作製できる。そこで、気水界面に浮かべたポリスチレン(PS)粒子に紫外線を斜めから入射した後、試料を回転させて再度紫外線を照射することによって、中心からずれた位置に2あるいは3つの空孔を持つPS粒子を作製した。さらに粒子を回転させながら紫外線を照射することによって、らせん状の空孔を持つ粒子の作製にも成功した。なお、粒子の空孔の形態および形成過程については3D-TEMトモグラフ法によって確認した。また、らせん空孔を持つ粒子は、特異な円二色性スペクトルを示すことも明らかとした。 (2)粒子以外の中空化:紫外線照射による空孔の生成は粒子のレンズ効果と思われるので、PS薄膜の上に配列したPMMA粒子に紫外線を照射し、PS薄膜の空孔形成について検討した。PS薄膜に回折限界を超える直径30nmの穴を作製できること、さらに穴のサイズおよび深さは紫外線の照射強度およびPMMAの粒径によって制御できることを明らかとした。 (3)FDTD計算による光強度分布と空孔位置の関連性:電磁波解析ソフト(FDTD法によるシミュレーション)を用いて粒子内部および外部の光強度分布を計算した。その分布と実際の空孔位置とは高い関連性を示したことから、空孔位置の精密な予測にはFDTDシミュレーションが有効であることを証明した。
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