研究課題/領域番号 |
15H03541
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
河西 奈保子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主任研究員 (50393749)
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研究分担者 |
住友 弘二 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (30393747)
湊元 幹太 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362359)
田中 あや 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究主任 (80564278)
大嶋 梓 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究員 (90751719)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工シナプス / ナノバイオ / 神経成長制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子ボトムアップテクノロジにより神経細胞との人工的なシナプスの形成を実現することを目標とする。以下の3点を並行して進めている。 1、神経細胞の軸索末端のマイクロウェル構造への誘導:ウェルの開口部でタンパク質を再構成するために用いる脂質膜上には神経細胞が接着しないことから、ピラー基板を用いて脂質膜とは接触しない環境を構築し神経細胞を成長させる。自発展開により脂質支持膜を作製したa-Siピラー基板では、脂質がピラー上には展開していないこと確認した。さらにピラー基板での細胞と脂質支持膜の蛍光観察方法を確立し、ピラー上への選択的な神経成長の観察に光学顕微鏡およびSEMにより成功した。また、金のピラーを用い、SAM修飾により神経成長の選択性向上に成功した。さらに、SAM膜を介してタンパク・ペプチドを修飾した基板を用い、神経細胞のシナプス形成の可能性について検討を開始した。一方、様々な基板と神経細胞との界面についてFIB/SEMを用いて観察し、単一細胞を用いて細胞と基板との親和性を検討することに成功した。 2、マイクロウェル構造の最適化:ピラーについては材料・直径・間隔の異なるアレイ基板を作製し、神経細胞成長を検討している。さらにピラーとマイクロウェルの混在する基板について作製方法から検討を開始した。 3、マイクロウェル構造へのシナプス形成因子の導入の基礎検討:動物種やバイオリソースからのcDNA入手可能性等を参考にしながら、神経シナプスの細胞接着性膜タンパク質の一群から、人工シナプス構築のキーとなる数種類のターゲットタンパク質を選択し、発現に必要となる組換えバキュロウイルスの作出を行った。また、蛍光タンパク質の融合タグを持つインテグリンを発現したウイルス粒子を用いてGUV膜への膜融合を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの計画ともおおむね順調に進捗しており,今後はさらにそれらを融合してゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するために、継続して以下3つの計画を並行して進める。 1、神経細胞の軸索末端のマイクロウェル構造への誘導:ピラーの材料検討・表面修飾により、継続して親和性が高い細胞誘導のプラットフォーム作製を目指す。具体的には、材料としてはTi、表面修飾としてはインテグリンを誘導するペプチドを使用し、神経細胞の接着系タンパク質の発現を光学顕微鏡のほかFIB/SEMでもより行いたい。また、生細胞のナノスケールの形態観察が可能なSICMを用いて、軸索誘導に関する詳細な知見を得るための初期検討を行いたい。 2、マイクロウェル構造の最適化:過去に実績があるオーバーハング(庇)付きマイクロウェル構造を基本とし、ピラーからウェルへの神経突起の高さ方向の成長について検討を行う。軸索末端の成長を促し、(3)で得られたタンパク質の効率的な再構成のための設計の最適化を行う。さらに機能発現・機能計測も可能となるよう、機能計測のため電極付マイクロウェルも同時に検討する。 3、マイクロウェル構造へのシナプス形成因子の導入の基礎検討:シナプス関連因子を中心に、複数の組換え膜タンパク質を選び、ひきつづき、バキュロウイルス粒子を作製する。蛍光タグとの融合は、組換え人工脂質膜へ導入後の、目的タンパク質の挙動観察を容易にする。シナプス因子をいくつか再構成した人工膜が、生細胞との相互作用機能を発揮するかどうかについての検討にも、あわせて着手したい。また、得られたシナプス形成因子の脂質膜への融合等の挙動については、光学顕微鏡以外にもプローブ顕微鏡を用いて検討したい。 以上の検討により得られた結果を基にして、神経科学学会、応用物理学会、生物物理学会ほか、関連する国内外の会議にて発表したい。
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