研究課題/領域番号 |
15H03544
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60152592)
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研究分担者 |
徳田 崇 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50314539)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / CMOSセンサ / マイクロフロー / 有機光反応 / オンタイム有機光反応システム |
研究実績の概要 |
本研究では、フローリアクターを利用した高効率な光反応を達成するとともに、オンタイムで反応結果を解析可能な有機光反応インライン解析システムを開発することを目的としている。 これまでの検討から、マイクロリアクター内において意図的に反応に不活性な試薬(窒素や水)を加えて二相系スラグ流を形成させ有機光反応を行うと、単一相系での反応結果に比べて反応がはるかに加速されることを見出している。本年度は、この特異な現象を、使用した有機溶媒、不活性試薬、フロー流路チューブの物理的パラメータとの関連性の観点から解明することを目指した。その結果、有機反応相の溶媒と、反応不活性相試薬やフロー流路チューブとの間の屈折率差が大きいほど反応効率が大きく向上することが判明した。この屈折率差により、照射した光が部分的に有機反応相内に閉じ込められる作用が影響しているものと考察した。さらに、蛍光電子顕微鏡観察により、一部の反応不活性相を用いた反応では有機反応相の薄膜が形成されていることも観測し、薄膜が反応効率向上へわずかながらも影響していることが示唆された。 また、本研究では、反応成績をオンタイムで解析するために、CMOSインテリジェントセンサを集積化したマイクロフローリアクターシステムの構築を目指しており、本年度は、センサ制御システムの改善と新設計フローセルによる精度向上を実現した。このセル容量を低減化した新型フローセルを用いることにより、光路長を増大させることを実現できた一方で、溶液置換時のノイズの低減化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロリアクター内において意図的に反応に不活性な試薬(窒素や水)を加えて作製した二相系スラグ流環境が、有機光反応の反応効率向上に与える効果の要因の解明に注力した。不活性試薬相の一つとして一種のイオン液体を検討した際、反応基質が有機反応相だけでなくイオン液体相にも大きく溶解することが判明し、不活性相として利用できるイオン液体の選定に時間を要した。 また、新たに設計・試作したCMOSセンサが、当初の予想を上回るノイズを発し、本研究で要求される精度を得るために、センサ駆動条件や読み出しシステムの回路改善を行う必要があった。改善の結果、ノイズレベルを低減することができた。 最終的に、イオン液体を含めた種々の不活性相を用いたスラグ流環境を作り出すことができ、有機反応相との屈折率が収率向上の大きな要因となっていることを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロリアクターでの有機光反応の高効率化に、スラグ流条件が極めて有効であること、さらにその主要因が屈折率差によりもたらされる光閉じ込め作用であることを明らかにすることができた。今後は、光反応の生産性向上を検討していく予定である。また、本手法が、特定の反応ではなく、有機光反応全般に適用可能な普遍的な合成ツールであることを実証するために、様々な光反応へ展開する。 また、オンライン計測に関して、前年度のシステム改善に伴って新たに明らかとなったセンサの設計上の課題である、拡散キャリアによる計測精度の制限を解決するための新しいCMOSセンサ設計に取り組み、更なる性能の向上を実現する。また、セル形状についてもさらなる最適化を行う予定である。
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