研究課題/領域番号 |
15H03546
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山口 堅三 香川大学, 工学部, 助教 (00501826)
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研究分担者 |
藤井 正光 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413790)
鈴木 孝明 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (10378797)
山本 和広 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40455449)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / NEMS / 静電アクチュエータ / アクティブプラズモン / メカニカルプラズモニクス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、NEMS可変プラズモニックデバイスによる多機能光集積デバイスの創製である。表面プラズモン(SP)の光閉じ込めと局所電場増強により、センサの高感度化やデバイスの小型化の要素技術となる。これまでに、NEMSアクチュエータで金属サブ波長格子を構成し、電気信号で構造をメカニカルに制御することでSP共鳴波長の可変を実現した(基盤技術)。そして、平成27年度の本申請の採択を受け、(1)基盤技術の向上と実施例の取得、(2)MEMS加工プロセスの導入、可変型な(3)SERSセンサや(4)ナノレンズに加え、(5)ファイバ一体化システムの開発を実施した。 平成28年度は、代表者と分担者3名、連携者1名、海外共同研究者1名、学生4名で研究体制を構成し、平成27年度の実績ベースに(1)基盤技術の更なる高性能化、(2)MEMSの加工プロセスと構造の再検討、(3)可変型SERSセンサとして、固着を用いた広帯域空間や金属ナノワイヤ・オン・金属ミラー(NWoM)による狭空間制御、一方、SPによる金属表面分子の化学変換の防止法をそれぞれ新たに提案、(4)デバイスの多機能化として、集光に偏向制御を導入、(5)ファイバ一体化システムのプロトタイプの開発をそれぞれ実施した(各項目における具体的内容は、【現在までの進捗状況】を参照)。 これらの研究成果(関連研究を含む)として、論文8編、会議発表24報(内、国際15報、国内8報、招待1報)、出願中特許の審査請求1件、受賞3件の研究業績を収めた。さらに、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)の採択を受け、メカニカルプラズモンデバイスを活用したナノ空間プラットホームの構築を目指す。 平成29年度は、国際会議発表を3報予定しており、これに加え、国際共同研究機関との連携強化、論文投稿やホームページ公開により、技術の先導性と積極的な情報発信に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の研究実績・進捗・今後の推進方策をもとに、NEMS可変プラズモニックデバイスによる多機能光集積デバイスの創製を項目毎に実施した(項目は、【研究実績の概要】と一致)。 (1)では、これまでの温度依存粒成長メカニズムを踏まえ、単結晶NaCl(塩)基板上へのヘテロエピタキシャル成長を採用することで、粒径700 nmの単結晶銀薄膜から10 mm四方からなる大面積な単結晶銀薄膜の成膜法を確立した。本成膜技術は、塩の水への溶解性を用いることで、従来困難であったガラスやペットフィルムなどの非晶質基板上における大面積な金属単結晶薄膜が可能で、その後の微細加工精度や光学特性(光センシング能を含む)の向上もそれぞれ達成していることから、SP分野に留まらずナノフォトニクスの発展に大きく貢献すると考える。また、本技術は、ネイチャー姉妹誌Scientific Reportsへの掲載を始め、学会等の受賞、プレスリリースによる対外的な情報発信からも技術の高い有用性が伺える。 (2)では、駆動とデバイスを分けたMEMS構造と加工プロセスの再検討により、高精度な制御と繰り返し利用可能なモデルを構築した。(3)では、固着を利用することで、400から15 nmの連続的なナノ空間を単一スリットで実現した。また、物理的加工を要しないNWoM構造により、10 nm前後の異なる空間をワイヤ-ミラー間で達成した。さらに、シリコン酸化膜で構造を覆うことで、SPによる検出分子の化学変換の防止に繋がることを明らかにした。(4)では、レンズと同一構造での偏向制御を見出した。(5)では、ラボ・オン・チップファイバの光学評価を実施し、200 nmの構造(100 nmの光学)変調が可能なプロトタイプの作製に成功した。 以上を総合的かつ客観的に評価すると、本申請書を提案した当初の計画以上に進展していることが十分に理解できる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請の採択を受け、実施した平成27年度及び平成28年度の研究実績と進捗状況を踏まえると、当初の計画を大幅に進展していることが分かる。そこで、平成29年度(最終年度)は、申請時の研究計画を再度見直し、下記に示すそれぞれの項目を実施することでNEMS可変プラズモニックデバイスによる多機能光集積デバイスを創製し、次世代光機能デバイスのコア技術として展開する。なお、研究体制は、代表者と分担者3名、連携者3名(申請時より、情報通信研究機構未来ICT研究所・上席研究員、和歌山県工業技術センター・副主査研究員を追加)、海外共同研究者1名、学生1名(内、修士1名)で構成し、本研究を推進する。 (1)では、単結晶銀薄膜の光学特性として、分光エリプソメータを用いた光学性能評価を実施する。これは、新たに追加したグループと連携し、本手法で成膜した薄膜の有用性を示す。また、これまでに確立した成膜から加工、計測プロセスを金においても実施する。(2)では、新たに提案したモデルの加工と計測を実施する。また、本研究の一部は、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)の採択を受け、国際共同研究機関との連携を強化し、実施する。(3)では、固着スリットやNWoM、シリコン酸化膜キャップ金粒子構造により、構造制御に伴うマルチリアルタイム計測を実施する。(4)では、レンズ・ディフレクタの多機能デバイスの製作と評価を実施する。(5)では、複数プロトタイプのファイバ一体化システムであるラボ・オン・チップファイバを実施する。 平成29年度は、国際会議発表を3報予定しており、これに加え、国際共同研究機関との連携強化(1年間の在外研究を予定)、論文投稿やホームページ公開により、技術の先導性と積極的な情報発信に努める。また、基盤技術を特許群として体系化し、多機能光集積デバイスの応用開発を進める。
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