研究課題/領域番号 |
15H03547
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三木 則尚 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70383982)
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研究分担者 |
小茂鳥 潤 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30225586)
菅野 義彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (30276232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工臓器 / マイクロ・ナノ工学 / 医療機器 / 実装技術 / インプラント |
研究実績の概要 |
本研究では、その小ささ、スケール効果を生かしたマイクロ・ナノ医療デバイスを実用化するための実装技術を、生体・デバイス間の界面、ならびにシステムの2点について実験的に調査し、体系化することを目的としている。平成28年度は、まずインプラント人工透析装置について、血液成分の流路壁面への付着について、流路形状ならびに加工方法に由来す表面粗さに注目し、実験的に解析した。よどみのない流路形状が最も血液付着が少なく、また表面粗さが小さい方が同じく血液付着が小さいことが明らかになった。生体適合性ステンレス材料に関して国際論文誌に投稿、採択されるとともに、材料をチタンに変更し、その加工方法、表面粗さ、表面への血液成分付着について検討を行った。 平成27年度は、麻酔下のラットを用いたex vivo実験により、血液濾過を用いるインプラント人工透析装置の有効性を示した。しかし、麻酔下のラットでは、麻酔薬の摂取量により5時間程度の実験が限度である。そこで、平成28年度は覚醒下ラットでの実験を行うために、手術手法について検討し、プロトコルをほぼ確定させた。平成29年度において、覚醒下ラットを用いた週単位の中期実験を行い、生体・装置界面ならびに、システムの有効性を検証する。 また、血液凝固には血小板が重要な役割を担っている。そこで、人工透析装置へ血液を導入する前段に、流体的に血球成分と血漿成分を分離する機構を考案し、検討を行った。10%から20%血球成分を減少させた状態で、人工透析装置へ導入することで、血液凝固を低減し、装置の使用可能年数を伸ばすことができると考えている。本技術に対して、国際シンポジウムで発表するとともに、特許出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、平成29年度のイヌを用いた長期実験に向けての下準備を整えることができた。まず、ラットに関しては覚醒下ex vivo実験に向けて、手術、実験プロトコルを確立した。実験中にラットがチューブを触らないように、血管、血管との接続部についての検討を実験的に行うことができた。In vitro実験は継続しており、特に、血球成分と血漿成分比を変える流体システムを取り付けた系を新たに確立した。本系により、血液凝固における血球成分の影響を評価することができる。 国際論文誌、国際学会、国内学会での発表に加え、特許を1件申請しており、研究の進展度は概ね想定通りといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に確立したプロトコルに基づき、覚醒下ラットを用い週単位の中期ex vivo実験を遂行する。これにより、装置と生体(血液)との界面に関してより詳細に検討、生体物質の付着と透析性能の推移を実験的に検証する。また、実装技術のもう一つのシステムに関して、特に装置と人工血管との接続機構について開発を行い、特許を申請するとともに、国際論文誌に投稿する。 In vitro系でもヒト血液を用いた長期実験を行うことで、特に血球成分、血漿成分比による装置性能の変化を評価する。インプラント透析システムに限らず、マイクロ・ナノ工学が真価を発揮する小型、インプラント型の人工臓器に対して有効なアプローチであることを証明する。 最終的に、イヌ長期実験を行う。まずはイヌ実験の詳細なプロトコルを、平成29年度前半の予備実験により明らかにする。長期実験は本研究期間中には結果が出ないと考えらえるが、その実験に至る過程で、装置と生体の界面、ならびにシステムの、マイクロ・ナノ医療デバイスの実装技術について検討を行う。これを、マイクロ・ナノ医療デバイスへ一般化、体系化し、論文にまとめ発表する。
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