研究課題
本研究では、有機強誘電体を対象として、フェムト秒レーザー励起による高効率・高強度テラヘルツ電磁波放射現象の探索、また放射したテラヘルツ電磁波を利用して、従来の実験手法では測定できない新たな分極イメージング法を開発し、強誘電ドメイン制御の可能性を検討することを主要な目的としている。今年度、バンドギャップ以上の光励起を行う為に、従来の透過配置のテラヘルツ電磁波放射検出系に加えて、反射配置での測定系を新たに構築した。バンドギャップ以上の光励起を行う場合など、励起に用いるフェムト秒レーザーの波長における侵入長が短い場合においても、詳細な実験が行えるようになった。更に、前年度までに整備した低温 (10K)にて実験が行える冷凍機を組み合わせることで、従来測定できなかった数々の有機強誘電体のテラヘルツ電磁波放射現象の探索を行った。その結果、電子型有機強誘電体であるTTF-CAにおいてテラヘルツ電磁波放射現象を見出した。TTF-CAは、典型的な電荷移動錯体として知られており、光照射によって中性相とイオン性相の劇的な相転移現象(光誘起相転移)が誘起されることが知られている物質である。実際、詳細な偏光依存性を測定したところ、テラヘルツ電磁波の放射機構は、従来の光整流に加えて、分極減少を伴う光誘起相転移によるものであることを明らかにした。さらに、光誘起相転移によるテラヘルツ電磁波発生は、光整流に比べて約5倍大きく、分極減少を利用する新しい原理によるテラヘルツ電磁波放射機構を見出したことは、予期していなかった発見である。一方、今年度構築した反射型低温テラヘルツ電磁波放射検出系の冷凍機のジャケット・サンプル部を改造し、べローズ機構を設置することで、サンプル位置を自動で動かせるイメージング光学系を構築した。前出のTTF-CAに適用し、強誘電ドメインの可視化に成功した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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