研究課題/領域番号 |
15H03551
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大野 恭秀 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (90362623)
|
研究分担者 |
永瀬 雅夫 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (20393762)
金井 康 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (30721310)
前橋 兼三 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40229323)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | グラフェン / センサ / エピタキシャル |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に明らかになったグラフェン本来のセンシング特性を調べ、センサ応用時に必ず問題になる非特異吸着抑制を分子修飾により達成した。また、SiC基板上エピタキシャルグラフェンをパターニングしてイメージセンサ構造の作製を行った。 ホスホリルコリン基とピレンを結合した新奇修飾物質を合成し、エピタキシャルグラフェン上に修飾を行った。接触角測定とHall効果測定により作製した修飾物質がエピタキシャルグラフェン上に欠陥導入なしで修飾できていることが確認された。このデバイス上にウシ血清アルブミン(BSA)というタンパク質を滴下すると、電気特性がほぼ変化しないことが分かった。他方、この修飾物質を修飾していないエピタキシャルグラフェンでは、滴下したBSAの濃度に応じて電荷中性点のシフトが観測された。これまでこの非特異吸着抑制は他のタンパク質や鎖の長い界面活性剤で覆うやり方がなされてきたが、この手法ではデバイスを洗うと効果がなくなってしまうと言う問題点があった。本研究で開発した手法は再現性の向上が見られ、応用に使用できるレベルのものであった。 また、グラフェンに結合する部分をピレンからベンゼンに変更することで明確な差を、接触角・電気特性から得ることができ、エピタキシャルグラフェンの結晶性の良さを証明した。 また、イメージセンサとして利用するためのアレイ構造作製を行った。このとき、均等にアレイ構造が作製できているかを知ることが非常に重要になるが、電気計測を行わなくても光学測定(ラマン散乱測定)によって、グラフェン内の歪み、キャリア濃度分布を測定できることを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度、グラフェン自体にイオンセンシング感度があるとこれまで言われていたことが違っていたことを、大面積単結晶エピタキシャルグラフェンを用いることで証明した。この結果は、グラフェンセンサの研究に大きな転換をもたらすものと考えられる。従って本研究課題では、グラフェン本来のセンシング特性を明らかにしたアレイ化デバイスの作製を行うことにした。本年までにイオン・タンパク質の吸着による、グラフェン本来はどのような感度を持つのか実証実験を行った。さらに、非特異吸着抑制についても全く新しい分子を合成することで達成した。アレイ化デバイスの測定については電気測定だけではなく、光学測定からも評価する手法を確立できたことから、課題の進捗としては概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度の目標としては、大面積単結晶エピタキシャルグラフェンを用いた、アレイ化デバイスの作製とそのセンシング評価になる。具体的には、まずこれまでの実験結果に照らした、最適なアレイ構造の作製、またそのアレイ構造グラフェンへの分子修飾を行う。さらに、本研究課題で明らかになりつつあるグラフェン本来のイオン・生体分子の検出機構の解明を行い、次の研究課題へつなげていく。
|