研究課題
研究代表者は、不純物濃度が高く深紫外光透過性が得られないものの、転位密度が低いという特徴を有する物理気相輸送(PVT)法で作製した窒化アルミニウム(AlN)種結晶のAl極性(0001)面上に、独自のハイドライド気相成長(HVPE)法で高純度AlNの高速ホモエピタキシャル成長を行うことで、低転位密度と深紫外光透過性の両方を有した実用的なAlNバルク結晶を得るプロセスを開発済である。平成27年度は、第一に絶縁体であるAlNにn形導電性を付与可能かどうか確認した。ドーパントとしてSiを選び、AlNのHVPE成長(1450℃)中にSiを同時供給してSi濃度2.6×10の17乗/立方cmのHVPE-AlN結晶を得た。SiドーピングによるAlNの結晶性劣化は見られず、オーミック電極形成後に電気的特性の解析を実施したところ、SiドープAlN結晶がn形導電性を有していることを確認できた。一方、Si不純物の活性化エネルギーは245 meVと深く、さらにSiドーピングに伴ってフェルミレベル効果でSi不純物濃度に匹敵する1.5×10の17乗/立方cmものアクセプタ性点欠陥(Al空孔)が形成され、キャリア濃度が2.4×10の14乗/立方cmと低いことが分かった。別途行った実験により、1400℃以上でAlNにSiを導入すると、Al原子空孔が形成されることが分かった。得られた世界初のn形バルクAlN結晶を用い、縦型のNi/n-AlNショットキーバリアダイオードを試作し、その整流動作を確認した。本結果はAlN結晶を用いた縦型電子デバイスの世界初の動作確認例である。キャリア濃度が低いこと、結晶の研磨技術が未熟なこともあり特性は良好ではないものの、今後、特性の向上が見込まれる。本結果はプレスリリースし、平成27年7月2日に化学工業日報の1面トップ記事となっている。
1: 当初の計画以上に進展している
実用レベルのAlNバルク結晶成長プロセスにSiドーピング技術を取り入れ、絶縁体であるAlNにn形導電性を付与することを達成した。SiドープAlN結晶のキャリア濃度が低く抑えられている原因の解明に取り組み、そのメカニズムが高温でAl原子空孔が形成されることにあることを解明した。世界初のn形導電性を有するバルクAlN基板を用いて縦型の電子デバイス(ショットキーバリアダイオード)を試作し、その動作を確認した。これによりAlNのパワーデバイス分野での使用の道を拓いた。
高キャリア濃度のn形AlNバルク結晶の成長にはSi濃度を増やすことと、Siドーピングに伴うAl原子空孔の発生抑制がキーである。Al原子空孔は1400℃以上で導入されやすくなることが分かったので、今後は成長温度を1450℃から低温に変えると共に、Si濃度の異なるAlN結晶を種々の成長条件で作製して条件の最適化を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Crystal Growth
巻: 446 ページ: 33-38
10.1016/j.jcrysgro.2016.04.030
Applied Physics Express
巻: 8 ページ: 061003 1-3
10.7567/APEX.8.061003
http://web.tuat.ac.jp/~kumagai/