研究課題
平成28年度、物理気相輸送(PVT)法で作製した低転位密度窒化アルミニウム(AlN)バルク基板上へ1450℃で高純度ホモエピタキシャル層のハイドライド気相成長(HVPE)を行う際、四塩化珪素ガスを供給することでシリコン(Si)ドープn形HVPE-AlN基板作製が達成された。平成29年度は、SiドープHVPE-AlN結晶のキャリア密度低下の原因が、アクセプタ性点欠陥形成によるものか転位形成によるものかを解析した。HVPE-AlN基板を水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合融液(450℃)に所定の時間ディップすることで表面にエッチピットが形成されることが分かった。このピット部を断面TEM観察したところ、刃状転位部にピットが形成されることが分かった。ピット密度は1平方センチメートル当たり10の3乗個台で、PVT-AlN基板で形成されるピット密度と同等であった。このことから、HVPE-AlN層はPVT-AlN基板の高い結晶性を引き継いでいることが分かった。PVT-AlN基板とHVPE-AlN層の界面付近の転位伝播を調べたところ、HVPE-AlN層に形成されるエッチピットに存在する刃状転位はすべてPVT-AlN基板から伝播していることが分かった。以上から、HVPE法によるホモエピタキシャル成長では新たな転位形成は無いと結論された。一方、フォトルミネッセンス解析では、高純度AlNでは見られなかった深い発光バンド(3.3 eV)がSiドープAlNでは見られた。このバンドはAl空孔と隣接するAlサイトを置換したSiに由来する発光とされており、SiドープHVPE-AlN結晶では、転位は形成されないが成長温度の高さに起因してSi不純物の取り込みと共に電荷補償のためAl空孔(アクセプタ性点欠陥)が導入されることが分かった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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