研究課題/領域番号 |
15H03558
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
成塚 重弥 名城大学, 理工学部, 教授 (80282680)
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研究分担者 |
上山 智 名城大学, 理工学部, 教授 (10340291)
丸山 隆浩 名城大学, 理工学部, 教授 (30282338)
清水 一男 静岡大学, イノベーション社会連携推進機構, 准教授 (90282681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヘテロエピタキシャル成長 / マイクロチャンネルエピタキシー / グラフェンマスク / グラフェンの直接成長 / グラフェン析出法 / グラフェン減圧CVD / 無転位テンプレート基板 / 減圧マイクロプラズマ処理 |
研究実績の概要 |
本年度初頭に、ケミカルビームエピタキシー(CBE)装置に故障が生じ、長時間使用できない状況が発生した。よって、本年度は、CBE装置を使用せずに実施可能なテーマを集中的に研究した。 【グラフェン析出成長の低温化】 アモルファスカーボンは主に炭素のsp2結合によっているが、ナノダイヤモンドはsp3結合により構成される。結合エネルギーがsp2よりsp3の方が小さいので、ナノダイヤモンドを用いた方が、同じ温度でも触媒中に溶け込む炭素量が増加し、より低い温度でも良好のグラフェンが成長するものと考えられる。そこで、ナノダイヤモンドを用いた析出成長をおこなったところ、400℃という低温でグラフェンの成長に成功した。さらには、触媒上に塗布するナノダイヤモンドの量を増加させたところ、触媒-基板界面へのグラフェンの直接成長にも成功した。 【グラフェン成長メカニズムの解明】 グラフェンの成長メカニズムを解明するために、減圧CVD成長における成長基板の面方位がグラフェンの成長に与える影響を検討した。その結果、r面サファイア基板を用いた場合は単純に2次元核生成モードにより単層グラフェンが成長しているが、c面サファイア基板を用いた場合には、まず、c面サファイア基板上にピットが形成し、次に、ピット内にグラフェンが成長していることがわかった。以上より、基板の触媒効果もグラフェン成長の重要なパラメータとなることが判明した。 【AlGaAs系レーザーダイオードの試作】 CBE装置を使用することが出来ないため、ナイトライド系の材料の成長が出来なくなった。そこで、本年度はAlGaAs系レーザーダイオードの試作をおこなった。その結果、パルス励起ではあるが電流注入によりレーザー発振に成功した。このことは、光電子集積回路の実現に向け、Si基板上にレーザーを作製する際の予備実験となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、CBE装置を使用せずに実験可能なテーマに関し集中的に研究を進めたが、やはり、GaN系材料に関する成長をあまり行えなかったことの全体計画へ与える影響は大きく、現在までの進捗状況は(3)やや遅れている、と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下に示す4つの課題について中心的に研究を推進する。 【グラフェンマスクを用いたマイクロチャンネルエピタキシー】 グラフェンマスクを用いたCBEによるGaNの低角入射マイクロチャンネルエピタキシー(LAIMCE)を試みる。特にマイクロプラズマがグラフェンマスクに与えるダメージに注目する。グラフェンマスクにはダメージを与えず、かつ、マイクロチャンネル中の自然酸化膜はしっかり除去できる条件が大切である。 【グラフェンマスクを用いた横方向成長層中の歪みの低減】 昨年に引き続き、グラフェンマスクを使用することによりマスクと成長層とが滑り、成長中に発生した残留応力が緩和されるメカニズムに注目する。本年は残留応力の評価手段としてのX線回折を検討する。このような成長中の残留応力の発生・緩和機構を詳細に検討することは、転位低減化のために重要な課題となる。 【a面GaN LAIMCEを用いたLEDの試作】 LAIMCEを用いて低転位a面GaNテンプレート基板の作製をおこない、さらに、それを基板として用いGaN系LEDを試作する。a面GaNテンプレート基板を用いることで、基板と垂直方向のピエゾ電界を無くすることが可能のため、その上に作製したGaN系LED特性の大幅な向上が期待される。 【CBE装置の完全修復】 先年度の初頭にCBE装置の有機金属供給系のベントラインの排気に使用していたターボ分子ポンプが故障した。故障原因は、有機金属がターボ分子ポンプに流れ込み、ベアリングが重くなったことが考えられる。昨年度の後半、他のターボ分子ポンプを用いて復旧作業を試みたが、再度ベアリングが重くなる不調が発生してしまった。よって、不純物の吸引に強い拡散ポンプを用いた修理をおこない、ベントラインの復旧をおこなう。すでにポンプの交換作業は終了し、今後、CBE装置の立ち上げをおこなう。
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