研究課題/領域番号 |
15H03559
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
名西 やす之 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 教授 (40268157)
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研究分担者 |
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 教授 (20312126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | InN / InGaN / 窒化物半導体 / 混晶組成 / 極微領域評価 / MBE / 転位 / リーク電流 |
研究実績の概要 |
独自に開発した高品質InN結晶成長技術(DERI法)を利用して、InGaNの非混和性を積極的に利用した極微ナノ構造および界面の制御を行い、InNおよびInGaNが持つ材料のポテンシャルを極限まで引き出し、デバイスとして応用できる、革新的材料基盤技術開発を行うことを目的として研究を進めている。 本年度は転位とリーク電流の関係を厳密に調べる研究手法、結晶高品質化を図る上での詳細なDERIサイクルの制御法及びヘテロ界面における原子レベルでの組成制御につき徹底的に研究を進め有益な成果を上げることができた。転位とリーク電流の関係については、らせん転位が一つだけ表面に存在するGaN選択成長層を用意し、コンダクティブAFMを用いてナノ領域のリーク電流を測る手法を確立し、原子レベルのステップ構造、転位とリーク電流分布につき明確な知見を得ることができるようになった。高品質化を実現するDERIサイクルの検討に関しては、表面にIn層をわずかに残した状況でDERIサイクルを繰り返すことが重要なことを明確にした。またヘテロ界面における原子レベルでの組成制御に関してはスプリング8のビームラインを用いた逆格子マッピングのその場観察から組成引き込み効果も重要なことを明らかにした。これらの成果はISGN国際会議、北アメリカMBE会議、秋の応用物理学会などで発表した。また本研究課題のアイディア、手法、現状などにつき、韓国済州島で開催されたICAE, 香港で開催されたEMN-3CG, 京都で開催された学術振興会、日本-ドイツ-スペイン合同シンポジウムなどで招待講演を行うなど国内外の学会やシンポジウムで発表を行い成果の普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InGaNの非混和性を積極的に利用した極微ナノ構造および界面の制御を行い、InGaNの全組成領域をデバイスとして利用する上で、まず転位と電気的、光学的特性との間を明確に示す評価手法を確立することが重要である。本研究では転位とステップが全くない選択成長層やこれが一つだけ存在する試料をまず準備し、この試料を用いてコンダクティブAFMを用いた原子レベルの形状とリーク電流の関係を明確にする実験を精密に行い、評価手法を確立することができた。また放射光を用いたMBE成長過程でのその場観察手法が成長層厚さ方向の界面の評価と制御に有効な手法であることも確認できた。その意味で研究目的の実現に向け概ね順調に研究が進展していると判断できる。一方でInGaN混晶のナノ構造をDERI法を用いて成長し制御する検討に関しては、大きな装置トラブルが発生して予定していた検討をこの期間内に進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
NTT赤坂氏、京都大学須田氏の協力を得ながら、転位及びステップを制御した基板上にDERI法を用いて非混和性を積極的に利用したナノ構造及びヘテロ界面を形成し、InGaN混晶における転位の影響を実際に抑制する検討に本格的に取り組む。また量子ナノ構造や極薄高品質膜を成長してその極微構造と電気的、光学的特性との相関に関する研究に着手する。
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