研究課題
シリコンと化学的性質が似ているゲルマニウムの原子上で、原子間力顕微鏡を用いた化学結合力測定を行った。試料としては、Ge/Si(111)-(7x7)表面を用いた。その結果、両者を明確に識別するには、活性な探針が必要であることが判明した。そして、化学結合力の比が探針に依らず一定値をとることがわかった。これはシリコンとゲルマニウムがほとんど同じ電気陰性度を持つことを示唆している。また、この比の値は探針に依らない普遍量となるため、共有結合力による両者の元素同定が可能であることがわかった。このことを実証するために、Ge/Si(111)-(5x5)表面を用いて、元素同定の実験を行った。この表面においても比が保たれていることがわかり、活性な探針を用いれば、両者を明確に識別できることが明らかとなった。原子間力顕微鏡を用いて、シリコン基板に固定された有機分子の高解像イメージングを行った。室温においても明瞭なコントラストが得られ、室温において有機分子の骨格像が解像できることが、初めて示された。さらに、高解像な像を得るための探針の条件を調べるために、各々の探針で分子上およびシリコン原子上で相互作用力の測定を行った。シリコン原子上で相互作用引力が強い活性な探針と相互作用引力が弱い不活性な探針が存在するが、どちらの探針においても分子上では同様の弱い引力が観測された。また、どちらの探針を用いても、分子の骨格像を得ることができることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
化学的性質が極めて似通っているシリコン原子とゲルマニウム原子の元素同定に成功した。これによって、共有結合性の元素に対する化学結合力に関して、ほとんど理解できたといえる。そして、本研究の電気陰性度に関する仮説とも矛盾のない結果が得られた。一方、室温において初めて単一有機分子の超高分解能観察に成功し、個々の有機分子内の高感度計測に向けた準備ができた。
シリコン表面上に様々な電気陰性度を持つ元素を吸着させる実験と解析を行う。アルミニウム原子を蒸着、酸素分子、一酸化窒素分子を吸着して、それぞれの原子をシリコン表面上に用意して、シリコン原子との電気陰性度の差を測定する。ポーリングのモデルに基づいた本手法では、電気陰性度差の符号が決定できないため、探針先端の元素を変える実験、ケルビンプローブ力顕微鏡を用いた実験、ハートリーポテンシャルの計算など理論的研究を行っていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 14件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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