原子間力顕微鏡による単原子の電気陰性度の計測

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15H03566
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 杉本 宜昭 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00432518)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 走査プローブ顕微鏡

研究実績の概要

二つの原子が化学結合を形成する際、電子を互いに均等に共有する場合は「共有結合」、片方の原子からもう片方の原子へ完全に電子が移行する場合は「イオン結合」となる。一般的には、酸化物などのほとんどの物質はこれらの中間である「極性共有結合」をとる。極性の大きさを決める「電気陰性度」は1932年にポーリングによって初めて具体的な式が与えられた。これまでは主にガスの反応熱のデータをもとに周期表の各元素に対して実験的に１つの値が定められていたが、今回、原子間力顕微鏡（AFM）を用いることによって、表面の個々の原子の電気陰性度を定量化することに初めて成功した。これにより、例えば同一のSi原子であっても、そのSi原子が周囲とどのように結合しているか、また、どの元素と結合しているかによって電気陰性度も変化することが実証された。本手法によって、周期表上の電気陰性度とは異なる、さまざまな化学環境下に置かれた元素の電気陰性度を測定することができるため、触媒表面上の原子や反応性の高い分子などの化学活性度への理解が進み、酸化チタンなどの機能性材料の更なる開発につながることが期待できる。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

原子間力顕微鏡（AFM）を用いた単原子の化学結合エネルギー計測によって、規整表面のO,N,Alなどの典型元素の電気陰性度を単一原子レベルで決定する成果を上げることができた。

今後の研究の推進方策

引き続き、様々な元素を用いて、AFMによる単原子計測を行う。特に、異なる基板を用いることで、化学環境が異なった原子の性質を明らかにしていく。

研究成果

• [国際共同研究] チェコ科学アカデミー(チェコ)
  • 国名: チェコ
  • 外国機関名: チェコ科学アカデミー
• [国際共同研究] マドリッド自治大学(スペイン)
  • 国名: スペイン
  • 外国機関名: マドリッド自治大学
• [雑誌論文] Electronegativity determination of individual surface atoms by atomic force microscopy (2017)
  • 著者名/発表者名: Onoda Jo、Ondracek Martin、Jellnek Pavel、Sugimoto Yoshiaki
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 8 ページ: 15155～15155
  • DOI: 10.1038/ncomms15155
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] The local electronic properties of individual Pt atoms adsorbed on TiO2(110) studied by Kelvin probe force microscopy and first-principles simulations (2017)
  • 著者名/発表者名: Yurtsever Ayhan、Fern?ndez-Torre Delia、Onoda Jo、Abe Masayuki、Morita Seizo、Sugimoto Yoshiaki、P?rez Rub?n
  • 雑誌名: Nanoscale 巻: 9 ページ: 5812～5821
  • DOI: 10.1039/c6nr07550a
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Ultrahigh-resolution imaging of water networks by atomic force microscopy (2017)
  • 著者名/発表者名: Shiotari Akitoshi、Sugimoto Yoshiaki
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 8 ページ: 14313～14313
  • DOI: 10.1038/ncomms14313
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Straight imaging and mechanism behind grain boundary electron emission in Pt-doped ultrananocrystalline diamond films (2017)
  • 著者名/発表者名: Panda Kalpataru、Inami Eiichi、Sugimoto Yoshiaki、Sankaran K.J.、Lin I-Nan
  • 雑誌名: Carbon 巻: 111 ページ: 8～17
  • DOI: 10.1016/j.carbon.2016.09.062
  • 査読あり
• [雑誌論文] Mechanical properties of In/Si(111)-(8×2) investigated by atomic force microscopy (2016)
  • 著者名/発表者名: Iwata Kota、Yamazaki Shiro、Shiotari Akitoshi、Sugimoto Yoshiaki
  • 雑誌名: Japanese Journal of Applied Physics 巻: 56 ページ: 015701～015701
  • DOI: 10.7567/JJAP.56.015701
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effects of Pb Intercalation on the Structural and Electronic Properties of Epitaxial Graphene on SiC (2016)
  • 著者名/発表者名: Yurtsever Ayhan、Onoda Jo、Iimori Takushi、Niki Kohei、Miyamachi Toshio、Abe Masayuki、Mizuno Seigi、Tanaka Satoru、Komori Fumio、Sugimoto Yoshiaki
  • 雑誌名: Small 巻: 12 ページ: 3956～3966
  • DOI: 10.1002/smll.201600666
  • 査読あり
• [雑誌論文] Combined atomic force microscopy and voltage pulse technique to accurately measure electrostatic force (2016)
  • 著者名/発表者名: Inami Eiichi、Sugimoto Yoshiaki
  • 雑誌名: Japanese Journal of Applied Physics 巻: 55 ページ: 08NB05～08NB05
  • DOI: 10.7567/JJAP.55.08NB05
  • 査読あり
• [学会発表] 原子間力顕微鏡による単原子の元素識別 (2016)
  • 著者名/発表者名: 小野田 穣、Ondracek Martin、Jelinek Pavel、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第64回応用物理学会 春季学術講演会
• [学会発表] Al蒸着Si(111)-(7x7)上のフォーススペクトロスコピー (2016)
  • 著者名/発表者名: 宮嵜 洋記、小野田 穣、塩足 亮隼、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第64回応用物理学会 春季学術講演会
• [学会発表] 隣接するSi4原子スイッチの相互作用 (2016)
  • 著者名/発表者名: 山崎 詩郎、前田 圭亮、杉本 宜昭、阿部 真之、Pablo Pou、Lucia Rodrigo、Ruben Perez、Pingo Mutombo、Pavel Jelinek、森田 清三
  • 学会等名: 第64回応用物理学会 春季学術講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡による水単分子層の高分解能観察 (2016)
  • 著者名/発表者名: 塩足 亮隼、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第64回応用物理学会 春季学術講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡による有機分子の超高分解能計測 (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉本 宜昭
  • 学会等名: 第15 回 SPring-8 ユーザー協同体顕微ナノ材料科学研究会、 第12 回 日本表面科学会放射光表面科学研究部会 合同シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] AFMによる個々の原子のフォーススペクトロスコピー (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉本 宜昭
  • 学会等名: 日本顕微鏡学会 走査型プローブ顕微鏡分科会 研究会「超高真空原子間力顕微鏡の最前線」
  • 招待講演
• [学会発表] Electronegativity of Individual Surface Atoms Determined by AFM (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, M. Ondracek, P. Jelinek and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 24th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM24)
  • 国際学会
• [学会発表] Observation of Azulene-to-fulvalene Rearrangement by AFM (2016)
  • 著者名/発表者名: A. Shiotari, K. Iwata, T. Nakae, Y. Shinagawa, S. Mori, T. Okujima, H. Uno, H. Sakaguchi and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 24th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM24)
  • 国際学会
• [学会発表] Chemical Identification of Individual Surface Atoms by AFM (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, M. Ondracek, P. Jelinek and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 24th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM24)
  • 国際学会
• [学会発表] Characterization of TiO2(011)-(2×1) Surface by AFM and STM (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, A. Yurtsever, M. Abe, C. L. Pang and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 24th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM24)
  • 国際学会
• [学会発表] Interacting Si atom switches induced by force and current (2016)
  • 著者名/発表者名: S. Yamazaki, K. Maeda, Y. Sugimoto, M. Abe, P. Pou, L. Rodrigo, R. Perez, P. Mutombo, P. Jelinek and S. Morita
  • 学会等名: 24th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM24)
  • 国際学会
• [学会発表] 走査プローブ顕微鏡による原子スイッチの組立と制御 (2016)
  • 著者名/発表者名: 稲見 栄一、浜田 幾太郎、上田 啓一、阿部 真之、森田 清三、杉本 宜昭
  • 学会等名: 分子研研究会「表面科学の最先端技術と分子科学 ～第7回 真空・表面科学若手研究会～」
• [学会発表] Chemical Identification of Individual Surface Atoms by AFM (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, M. Ondracek, P. Jelinek, and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 分子研研究会「表面科学の最先端技術と分子科学 ～第7回 真空・表面科学若手研究会～」
• [学会発表] 原子間力顕微鏡を用いた単原子分子計測 (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉本 宜昭
  • 学会等名: 分子研研究会「表面科学の最先端技術と分子科学 ～第7回 真空・表面科学若手研究会～」
  • 招待講演
• [学会発表] ナノクラスターを利用した室温スイッチ素子の創成 (2016)
  • 著者名/発表者名: 稲見 栄一, 浜田 幾太郎, 上田 啓一, 阿部 真之, 森田 清三, 杉本 宜昭
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] AFM/STMによるTiO2(011)表面の解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 小野田 穣, Ayhan Yurtsever, 阿部 真之, Pang Chi Lun, 杉本 宜昭
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡によるアズレン-フルバレン転位反応の高分解能測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 塩足 亮隼, 岩田 孝太, 中江 隆博, 品川 友志, 森 重樹, 奥島 鉄雄, 宇野 英満, 坂口 浩司, 杉本 宜昭
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] In/Si(111)-8×2表面の原子間力顕微鏡測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 岩田 孝太, 山崎 詩郎, 塩足 亮隼, 杉本 宜昭
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] 非接触原子間力顕微鏡によるAlナノクラスターの研究 (2016)
  • 著者名/発表者名: 宮嵜 洋記, 小野田 穣, 杉本 宜昭, 塩足 亮隼
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡による単一原子の電気陰性度の決定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 小野田 穣, Ondracek Martin, Jelinek Pavel, 杉本 宜昭
  • 学会等名: 2016真空・表面科学合同講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡によるアズレン―フルバレン転位反応の高分解能測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 塩足 亮隼、岩田 孝太、中江 隆博、品川 友志、森 重樹、奥島 鉄雄、 宇野 英満、坂口 浩司、杉本 宜昭
  • 学会等名: 物性研短期研究会「走査トンネル顕微鏡による物性研究の現状と展望」
• [学会発表] 室温AFMによるSi(111)-(7×7)表面上の有機分子の観察 (2016)
  • 著者名/発表者名: 岩田 孝太、山崎 詩郎、Pingo Mutombo、Prokop Hapala、Martin Ondracek、 Pavel Jelinek、杉本 宜昭
  • 学会等名: 物性研短期研究会「走査トンネル顕微鏡による物性研究の現状と展望」
• [学会発表] 室温STMを用いたAuナノクラスターの作製とその特性評価 (2016)
  • 著者名/発表者名: 宮嵜 洋記、仁木 康平、塩足 亮隼、杉本 宜昭
  • 学会等名: 物性研短期研究会「走査トンネル顕微鏡による物性研究の現状と展望」
• [学会発表] 原子間力顕微鏡によるアズレン―フルバレン転位反応の高分解能測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 塩足 亮隼、岩田 孝太、中江 隆博、品川 友志、森 重樹、奥島 鉄雄、 宇野 英満、坂口 浩司、杉本 宜昭
  • 学会等名: 分子アーキテクトニクス研究会 第7回研究会
• [学会発表] 非接触原子間力顕微鏡を用いたAl ナノクラスターの弾性測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 宮嵜 洋記、小野田 穣、塩足 亮隼、杉本 宜昭
  • 学会等名: 日本表面科学会関東支部第4回関東支部セミナー 表面・薄膜分析シリーズVol.2
• [学会発表] Interaction between adjacent twin Si4 atom switches (2016)
  • 著者名/発表者名: S. Yamazaki, K. Maeda, Y. Sugimoto, M. Abe, P. Pou, L. Rodrigo, R. Perez, P. Mutombo, P. Jelinek, S. Morita
  • 学会等名: 13th International Conference on Atomically Controlled Surfaces, Interfaces and Nanostructures
  • 国際学会
• [学会発表] TiO2(011)-(2×1) 表面のAFM/STM による研究 (2016)
  • 著者名/発表者名: 小野田 穣、Ayhan Yurtsever、阿部 真之、Chi Lun Pang、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第77回応用物理学会 秋季学術講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡によるIn/Si(111)-8×2表面の測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 岩田 孝太、山崎 詩郎、塩足 亮隼、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第77回応用物理学会 秋季学術講演会
• [学会発表] 非接触原子間力顕微鏡によるAl ナノクラスターの研究 (2016)
  • 著者名/発表者名: 宮嵜 洋記、小野田 穣、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第77回応用物理学会 秋季学術講演会
• [学会発表] 原子間力顕微鏡による単一原子の電気陰性度測定 (2016)
  • 著者名/発表者名: 小野田 穣、Martin Ondracek、Pavel Jelinek、杉本 宜昭
  • 学会等名: 第77回応用物理学会 秋季学術講演会
• [学会発表] 走査プローブ顕微鏡を用いた原子スイッチの組立と制御 (2016)
  • 著者名/発表者名: 稲見 栄一、浜田 幾太郎、上田 啓一、阿部 真之、森田 清三、杉本 宜昭
  • 学会等名: 日本物理学会 2016年秋季大会
• [学会発表] Electronegativity of single atoms determined by atomic force microscopy (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, M. Ondracek, P. Jelinek and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 20th International Vacuum Congress (IVC-20)
  • 国際学会
• [学会発表] AFM/STM observation of azulene-to-fulvalene rearrangement in a small molecule (2016)
  • 著者名/発表者名: A. Shiotari, K. Iwata, T. Nakae, Y. Shinagawa, S. Mori, T. Okujima, H. Uno, H. Sakaguchi and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 19th International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopy (nc-AFM 2016)
  • 国際学会
• [学会発表] Electronegativity of individual surface atoms determined by AFM (2016)
  • 著者名/発表者名: J. Onoda, M. Ondracek, P. Jelinek and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 19th International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopy (nc-AFM 2016)
  • 国際学会
• [学会発表] TiO2(011)-(2×1) Surface characterized by atomic force microscopy and scanning tunneling microscopy (2016)
  • 著者名/発表者名: J.Onoda, A. Yurtsever, M. Abe, C. L. Pang and Y. Sugimoto
  • 学会等名: 19th International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopy (nc-AFM 2016)
  • 国際学会
• [備考] 研究室HP
  • URL: http://www.afm.k.u-tokyo.ac.jp