次世代の高精細かつ画期的な省エネ型のディスプレイ実現のため、高移動度かつ高信頼性酸化膜電界効果トランジスタの創生が必至である。高移動度であることで、素子サイズを縮小でき、高信頼度であることで素子動作電圧を最適化し低減出来る。これに因って、さらなる高精細化が可能の上に、高精細化に伴う消費電力の増大を抑制することが可能となる。つまり、薄膜トランジスタの進化は、次世代のエネルギー消費削減に多大な貢献が可能となる。この実現のための基礎学理解明が本研究の展開目標である。 本研究の具体的な研究開発の目的としては、酸化膜中の酸素原子空孔(Vo)に伴う“乱れ”に着目した基礎物性の解明であり、我々独自の“不安定Voを抑制できる酸化膜”にて、伝導の乱れと不安定Voの相関を明らかにして、新元素構成酸化膜のマテリアルデザインを目指している。 これまでに単層膜の薄膜トランジスタ試作・評価によって、電荷トラップの形成密度は添加元素で制御できるものの、移動度の低下が元素添加によって低下することが、当初の予定以上に厳しく効いて、特性を低減させることがわかった。この低減を踏まえて、当初想定の従来の単層構造に代えて、2層複合膜の新構造での成膜組み合わせを検討した。この2層積層膜を薄膜トランジスタに加工して、学術的な新規性と実用性の高い素子の試作と評価を行った。従来の半導体膜を半分の厚さとして、この上に絶縁膜を形成する多層膜を成膜し、絶縁膜の上からソースとドレン電極を形成して薄膜トランジスタとした。この素子は、従来の半導体部位が半分であるにも関わらず、薄膜トランジスタとして充分な電流を流すことが出来るだけでなく、絶縁膜部位が薄膜の構造安定性を高める効果も得られた。 さらに薄膜トランジスタとしての特性の向上を目指して、酸化インジウム膜を原子層毎に積層して確実に酸化反応を生じさせながら、酸化膜を造ることを試みている。
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