研究課題/領域番号 |
15H03572
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
枝川 圭一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20223654)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 準結晶 / 臨界状態 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、フォトニック準結晶中の光状態の研究を遂行した。対象は12回対称と10回対称のフォトニック準結晶とし、光状態の計算を行った。12回対称準結晶としてはスタンフリーのタイリングを、10回対称準結晶としてはペンローズタイリングを用いた。それぞれの構造について近似度の異なる5種類の近似結晶構造を高次元射影法により作成した。続いて各タイリングの頂点位置に誘電体円柱を配置した。このとき円柱半径とタイリングの辺長の比と、誘電体の誘電率をパラメータとして、標準的な平面波展開法を用いて、光状態計算を行った。光バンドギャップが最大となる構造に対してギャップの直上、直下、十分ギャップから離れた低周波数域の3つの周波数域の光状態についてparticipation(P)を計算し、そのシステムサイズ(L)依存性を調べた。通常のフォトニック結晶の光状態は拡がっており、その場合PはLの2乗に比例する。臨界状態であれば、このべきが2より小さくなる。12回対称、10回対称ともにべきは1.6程度の値となり、臨界状態が形成していることがわかった。 続いて、フォトニック準結晶の光状態のマルチフラクタル性について調べた。ここでは比較のため、アモルファス構造についても計算を行った。ここでは、誘電体柱間距離に下限を設定し、その位置をランダムに決めてアモルファス構造とした。上述の3つの周波数域でBox-counting法を用いて一般化participationのシステムサイズ依存性を計算した。その結果を用いてsingularityスペクトルを導出した。フォトニック準結晶についてバンドギャップ直上と直下の周波数域でマルチフラクタル性が確認された。アモルファス構造についても同様な結果が得られた。得られた結果をネパール・カトマンズで開催された準結晶国際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9の研究実績の概要に記したように昨年度はフォトニック準結晶の光状態について研究を進め、臨界状態性、マルチフラクタル性を見出した。準結晶物質中の電子が臨界状態性を示すことは理論的に予言されているが、実際にそのような状態が存在するかどうか実験的な検証はなされておらず、これを明らかにすることは準結晶の研究分野で残された重要課題の一つとなっている。電子系で実験的にそのような状態の存在を示すことが難しい理由の一つに電子―電子相互作用の存在が実験結果の解釈を複雑にしている点があげられる。光の系では電子―電子相互作用に相当するものがなく、臨界状態の存在を実証することは電子系にくらべると容易であると当初予想し、実際に光臨界状態の存在を示すことができた。これにより本研究の目的の一つが達成された。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、一昨年度に十分な成果が得られなかった次の研究をもう一度やり直す。まず第1の目的である「従来のフォトニック結晶よりも大きな3次元完全PBGを形成するフォトニック準結晶を開発すること」はいまだに成功していない。昨年までに4配位の誘電体ネットワーク構造からなる3次元フォトニック準結晶を3次元ペンローズ格子を用いて構成し、数値計算により完全フォトニックバンドギャップ(PBG)が形成することは示されたが、その大きさはフォトニック結晶で最大のPBGを形成するダイヤモンド構造の誘電体ネットワークに比べるとかなり小さい。3次元ペンローズ格子はP型正20面体準結晶であるが、一般にF型正20面体準結晶の方がブリルアンゾーンの等方性が高い。つまりブリルアンゾーンが球に近い。そのため原理的には完全PBGのサイズは大きくなりうる。従って、本年はまず3次元ペンローズ格子に相当するF型正20面体準結晶の基本格子構造を射影法で作成し、これに基づいて誘電体ネットワークからなるフォトニック準結晶を構成する。これに対し、数値計算によりPBG幅を求める。 当初計画していたマイクロ光造形法による構造試作とテラヘルツ波透過実験は装置の不具合のため実行できていない。ようやく装置の修理が終わり、本年度に実行する。マイクロ光造形法では通常、原料はアクリル系光硬化樹脂を用いる。これにレーザーを照射して硬化させることで平面構造をつくり、それを順次積層することで3次元構造を構築する。本研究では構造部の誘電率を上げるためにアクリル系光硬化樹脂にセラミックスの粉を混ぜ込んで、造形後に脱脂、焼結する。作製した構造体のテラヘルツ波透過スペクトルをテラヘルツ-TDS法により測定する。 得られた結果を国内外の学会で発表し、論文にまとめる。
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