本研究の主要な目的である、「従来のフォトニック結晶よりも大きな3次元完全PBGを形成するフォトニック準結晶を開発すること」について昨年度、一昨年度の研究では達成できていない。そこで本年度はこれを重点的に進めた。昨年までに4配位の誘電体ネットワーク構造からなる3次元フォトニック準結晶を3次元ペンローズ格子を用いて構成し、数値計算により完全フォトニックバンドギャップ(PBG)が形成することは示されたが、その大きさはフォトニック結晶で最大のPBGを形成するダイヤモンド構造の誘電体ネットワークに比べるとかなり小さい。3次元ペンローズ格子はP型正20面体準結晶であるが、一般にF型正20面体準結晶の方がブリルアンゾーンの等方性が高い。つまりブリルアンゾーンが球に近い。そのため原理的には完全PBGのサイズは大きくなりうる。従って、本年度はまず3次元ペンローズ格子に相当するF型正20面体準結晶の基本格子構造を射影法で作成し、これに基づいて誘電体ネットワークからなるフォトニック準結晶の構成を試みた。これに対し、光状態密度の計算を行い、PBGの形成を確認した。しかしながらその幅は昨年度計算したP型のものに比べると小さかった。そこで現在さらに誘電体ネットワークの配位数の調整を行うことで、PBG幅の増大を試みている。つまりネットワークのボンドを系統的に抜き出し、平均配位数がPBG形成に有利な4となるように調整した構造を作成している。 本年度は本研究の主題であるフォトニック準結晶のPBG形成と光臨界状態に関連して準結晶の秩序形成メカニズムの解明をめざして数値モデルによる準結晶構造成長の分子動力学シミュレーションを行った。準結晶構造秩序の高次元性を反映した特異な秩序形成機構が働いていることを明らかにした。
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