研究課題
真空蒸着法による高品質ヘテロ構造の作製を目指し,蒸着条件の制御性を高めるため,セル温度のPID制御機構を整備した。これにより,再現性・一様性に優れた製膜が可能となった。ハロゲン化鉛ペロブスカイト半導体ヘテロ構造作製を目的として,真空蒸着法によりメチルアンモニウムハロゲン化鉛CH3NH3PbI3/CH3NH3PbBr3ヘテロ積層膜の作製をおこなった。その結果,条件によってはヘテロ積層膜とはならず,一様な混晶(CH3NH3PbI3-xBrx)膜が製膜されることが明らかとなった。製膜中も製膜後も高温プロセスを経ていないにもかかわらずこのような自発的混晶化が起きるのは驚くべきことである。これは,ハロゲン化物イオンサイトの欠陥を介したイオン拡散が原因であると推測している。基板の導電性の有無も含めた様々な条件での製膜を繰り返し,自発的混晶化のメカニズム究明とその抑制の可否について詳細な検討を進めているところである。また,ホルムアミジニウムヨウ化鉛CH(NH2)2PbI3薄膜の真空蒸着による製膜をおこなった。この材料は溶液プロセスでは室温で非ペロブスカイト相が析出し,アニールによってペロブスカイト相へ転移するものの数時間で非ペロブスカイト化すると報告されている。真空蒸着で作製した薄膜は,基板温度を室温に保って製膜しているにもかかわらず,ペロブスカイト相となり,しかもそれは少なくとも17日以上にわたって安定であることがわかった。これについてもヘテロ積層膜の作製を計画している。
2: おおむね順調に進展している
メチルアンモニウムハロゲン化鉛について,条件によってはヘテロ積層膜が作製できることを示せた。しかし,同時に,自発的混晶化という意外な現象が起こることが明らかとなり,この現象の克服が課題として浮かび上がった。
メチルアンモニウムハロゲン化鉛における自発的混晶化のメカニズムを究明し,それを抑制してヘテロ積層膜を作製する方法を確立する。また,ホルムアミジニウムハロゲン化鉛についてもヘテロ積層薄膜作製を試みる。
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