研究課題/領域番号 |
15H03576
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
富田 康生 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50242342)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 応用光学・量子光工学 / ナノ材料 / 複合材料・物性 / 量子ドット / 量子ビーム |
研究実績の概要 |
本研究は光重合性ナノ微粒子-ポリマーコンポジット(NPC) 中のホログラフィック光重合で生じる多次元フォトニック格子構造の形成のメカニズムを統計熱力学的手法により理論的に解明するとともに、フォトニック格子構造形成可能なNPC をフォトニクス・中性子光学へ応用しNPC の高度な性能・斬新性・有用性を実証することを目的とする。本年度においては、第一に、ホログラフィック光重成におけるNPC中でのナノ微粒子と重合モノマーの異方性光重合相分離過程について理論的に究明し、光重合過程の違い(連鎖光重合と逐次光重合)により生成されるホログラフィック格子の屈折率変調が格子間隔に大きく依存することを明らかにした。第二に、ウェアラブルディスプレーによる拡張現実や複合現実の実現に向けた高効率ホログラフィック回折素子への応用を念頭に、有機ナノ微粒子としての超高屈折率ハイパーブランチポリマーを用いたNPCによる高屈折率変調の体積ホログラム記録について究明した。その結果、緑色波長において屈折率変調が0.02を超える体積ホログラム記録を実証した。第三に、高濃度半導体CdSe量子ドット分散NPCの非線形光学応答過渡特性について究明した。その結果、半導体CdSe量子ドットを6.8vol.%まで分散した一様露光NPCフィルムの非線形光学過渡応答特性をフェムト秒レーザーを用いた過渡格子測定および時間分解ポンプ-プローブ非線形吸収スペクトル測定を行い、高光強度パルス入射時のオージェ効果による非線形光学応答減衰時定数の低減化を観測した。第四に、NPC体積格子による冷・極冷中性子ビーム制御の高効率化に向けて、ナノダイヤモンド分散NPC中へのホログラフィック体積格子の記録に世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPCのホログラフィック格子形成に関する理論解析および種々の実験(NPCの特性改善、非線形光学応答特性、冷・極冷中性子ビームのNPC体積格子による回折現象)について当初の計画におおむね沿って実施出来ている。加えて、冷・極冷中性子屈折率の大きなナノダイヤモンドの重合性モノマーへの高濃度分散(~20vol.%まで)にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
理論解析についてはナノ微粒子のサイズエントロピー効果を精緻に考慮した検討がまだ課題として残っており、その対応について究明したい。光波長領域でのホログラフィックNPC体積格子の特性改善に関しては、緑色波長において1ミクロン未満の格子間隔での屈折率変調の増大化の検討を進める。半導体CdSe量子ドット分散NPCの非線形光学応答については、過渡格子測定法および時間分解ポンプ-プローブ非線形吸収スペクトル測定による過渡応答特性についてさらに究明するとともに、可飽和吸収を含む高次非線形光学効果の精密測定のためのzスキャン測定法の一般理論の構築を目指す。NPCホログラフィック格子による冷・極冷中性子ビーム制御に関しては、ナノダイヤモンドを光重合性モノマーへ高濃度分散したときの均一分散性の向上と記録したホログラフィックNPC体積格子の高品質化を目指す。
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