研究課題/領域番号 |
15H03580
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
的場 修 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (20282593)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ディジタルホログラフィー / 顕微鏡 / マルチモーダル / 蛍光 / 位相 |
研究実績の概要 |
本研究では、バイオイメージング分野で革新的な3次元動画像顕微鏡を提供するために,蛍光3次元像と位相3次元像を同時取得可能なマルチモーダルディジタルホログラフィック顕微鏡を提案し,その実証実験を行う。特に蛍光ホログラムと位相ホログラムを同時取得するために、位相物体情報をもつ光波には感度のない偏光依存性のある2重焦点距離をもつフレネルレンズを設計・開発する。このため、サブ波長周期構造による偏光依存性を発現させる、あるいは同等の機能をもつ素子を用いる。本年度は、蛍光2次元及び位相3次元の動画計測可能なディジタルホログラフィック顕微鏡を構築し、直径4umの蛍光ビーズやオオカナダモなどの自家蛍光と細胞形状の同時取得に成功した。構築したシステムの計測速度は蛍光像が6フレーム毎秒、位相像が40フレーム毎秒である。また、2重焦点距離をもつ偏光依存性フレネルレンズの焦点距離を算出した。3次元細胞計測では、細胞の奥行き位置を特定し、全ての細胞に焦点があったデータを再構成する必要がある。これは多物体3次元位置マルチトラッキングを行う技術開発となる。そのため、マイクロメートルサイズの位相物体に対して奥行き位置を特定するためのフォーカス評価値について検討した。その結果、奥行き位置のずれが発生すること、領域分割が必要なことが明らかになった。今後の課題としては奥行き位置の精度向上のための評価式の改善と自動的な領域分割アルゴズムの開発が必要である。また、位相物体が移動する場合に位相像がぼけて観測される。この位相ゆらぎを補正するための逆フィルタ処理を行い、位相物体再生が可能なことをシミュレーションにより明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、蛍光3次元像と位相3次元像を同時動画記録可能なマルチモーダルディジタルホログラフィック顕微鏡の開発に向けて、偏光依存性のある2重焦点距離をもつフレネルレンズの設計と顕微鏡の試作を行うこと、3次元細胞観察に向けた奥行き位置の合焦判定を行う方法を確立することの2項目を設定した。第1の項目では、本年度は蛍光2次元像と位相3次元像の同時動画記録可能なマルチモーダルディジタルホログラフィック顕微鏡の開発に成功した。しかしながら、蛍光3次元像を得るためのキーとなる素子である、偏光依存性の2重焦点距離をもつフレネルレンズの開発が、設計段階にあり、サブ波長構造による偏光依存性の発現をFDTD法などによる検証ができていない状況にある。平成28年度にその検証と試作に向けた取り組みを行う。第2項目の3次元奥行き位置の合焦判定では、奥行き方向に合焦か非合焦の状態かをソフトウェアで検証することが必要であるため、フォーカス値の指標を設定し、シミュレーションによりその性能を評価した。その結果、奥行き位置にずれが生じてはいるが、鮮明なピークは得られており、評価指標の改善が必要であるものの、奥行き位置の特定は可能な状態にある。以上の結果より、2つの項目に対して研究は順調に進んでいるため、概ね順調であるとした。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光3次元像と位相3次元像を同時かつ動画計測するための光学系の構築は今年度の研究で整っている。そのため、キーとなる偏光依存性の2重焦点距離をもつフレネルレンズの開発及び同等の機能を有する素子を導入し、当初の研究目標を達成する基盤を確立する。今年度に得られた2つの焦点距離の値を元に、フォトレジストあるいはレーザー加工により2つの焦点距離をもつフレネルレンズを試作し、蛍光3次元ディジタルホログラフィック顕微鏡の動作確認を行う。次に、サブ波長周期構造による偏光依存性の発現の検証をシミュレーション及び実験で検証を行う。最後に偏光依存性のある2重焦点距離フレネルレンズを構築ずみのディジタルホログラフィック顕微鏡に導入し、マルチモーダルディジタルホログラフィック顕微鏡を構築する。3次元細胞観察に向けて、奥行き方向の合焦位置の特定精度を高めるための評価指標式について細胞に特化した改善を行う。このオートフォーカス機能の有効性をシミュレーション及び実験系で実証する。
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