本年度は,蛍光3次元イメージング技術の構築に向けて実施計画書で挙げた蛍光ビーズを用いた実験を行なった。位相変調型空間光変調素子(SLM)およびイメージセンサを用いた実験により直径約2ー10umの蛍光ビーズのホログラムを取得し,再生することに成功した。さらに,3次元計測の検証として蛍光ビーズを移動ステージにより奥行き位置を変えることで3次元計測が可能であることを実証した。また,実験系の最適化設計として,レンズの焦点距離,イメージセンサの観察位置,蛍光の波長幅,回折角度差をパラメータとして再構成像を評価した。得られた結果を元に光学系を構築し,ホログラム取得と再構成が可能であることを実証した。3次元位置の特定では,位相情報による奥行き位置の特定からデフォーカスした2次元蛍光像の3次元化に成功した。このとき,溶液と空気の屈折率差による球面収差とデフォーカス距離の補正を導入した。構築した蛍光ディジタルホログラフィック顕微鏡の応用としてマウスの神経細胞の観察を行なった。一部の神経細胞にGFPを発現させた脳スライスを用いて,蛍光および位相像の同時計測を行なった。蛍光では白質と灰白質の境界がはっきりと見ることが難しいが,位相計測により境界をはっきりと確認することができている。この結果から,生物観察においても蛍光と位相を同時に観察することの有用性を実証することができた。ただし,蛍光3次元像と位相3次元像の同時観察を実現するには至らなかったが,蛍光3次元像の実験的取得によりその実現についての大きな課題を解決することに成功した。学術論文を2編(総合解説論文を含む)と国際会議10件を発表し,研究成果の国際的発信を行なった。
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