本年度は、フラグメント分解運動量画像計測法の時間分解能の改善および、レーザー誘起音響脱離法を用いた生体分子の真空導入装置への高分解能イオン運動量画像計測装置への組み込みを行った。 フラグメント分解運動量画像計測装置においてフラグメントイオンの2次元検出器への到達時間を復元するための装置として用いる透光性セラミックスを用いた空間光強度時間変調装置の電極間隔を広げることで静電容量を小さくすることにより、約1桁の時間応答の向上を実現した。光強度変化(10%-90%)を1マイクロ秒以下で実現可能となったため、質量電荷比が近いフラグメントイオンの分別が可能となった。 一方、レーザー誘起音響脱離法を用いた生体分子の真空導入については、多層円筒電極から構成されるイオン運動量画像計測装置に組み込み、背面より波長527nmのナノ秒レーザーを照射することで蒸気圧の熱分解しやすい有機分子がスピンコーターを用いてコートを行った有機分子をコート面から脱離可能であることを確認した。本年度は新たに、金属薄膜試料を超高真空対応の中空XY電動ステージ上に設置しラスタースキャンを行うことで、ダメ金属薄膜にダメージが入ること無く継続的に計測できる装置の構築を行った。 今後は上記の開発装置を用いて、アト秒パルスで誘起されるサブフェムト秒から数フェムト秒の時間スケールで進行するアミノ酸分子を含む多原子分子内の電荷移動過程をポンプ・プローブ計測法で実時間追跡を行う予定である。
|