研究課題/領域番号 |
15H03587
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荻 博次 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90252626)
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研究分担者 |
南野 哲男 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30379234)
後藤 祐児 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (40153770)
中村 暢伴 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50452404)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオセンサー / アミロイドβ / 超音波 |
研究実績の概要 |
新たなMEMS水晶振動子バイオセンサーを開発した。安定性と感度の大幅は向上を確認し、これを使用して夾雑物中のバイオーマーカーの検出を行った。炎症反応のマーカーとしてC反応性プロテイン(CRP)をターゲット蛋白質とし、リン酸緩衝溶液にCRPを混入した場合と、さらに夾雑物として牛血清アルブミンをCRPの最大10万倍まで混入した溶液を用いた。結果、濃度定量に夾雑物の影響はほとんど現れないことが判明した。 また、バイアス電場を印加しアプタマーを固定化するシステムの開発を開始した。水晶振動子の片側からバイアス電場を印加して表面にアプタマーを固定化する原理である。結果、アプタマー固定を裏付ける有意なデータが得られた。 また、全反射蛍光顕微鏡水晶振動子バイオセンサーを開発し、アルツハイマー病の原因蛋白であるアミロイドβペプチドの凝集および融解反応のモニタリングを行った。アミロイドβ線維を全反射蛍光顕微鏡により観察し、これがアントシアンにより融解する様子を、QCMおよび蛍光顕微鏡の両方で評価した。結果、線維構造と融解能との関連性を強く示す結果を得た。 また、超音波を集束してES細胞に照射した際の、ES細胞の分化誘導に与える影響を調べる実験を開始した。マウスES細胞を用いた。培養液を介してES細胞に超音波を照射し、その後の分裂や発生に及ぼす影響を調べるためのシステムを構築した。 また、ラムネ型バイオセンサーによる粘弾性計測法のシステムを確立することに成功した。これまでは知られていない蛋白質構造変化と粘弾性量との相関を見出すことに成功した。 さらに、超音波照射によるアミロイドβペプチドの異常凝集現象の解明を行うことに成功した。超音波キャビテーションが通常では起こりえない核生成反応を引き起こすことを実験的・理論的に世界で初めて解明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たなMEMSバイオセンサーの開発に成功したこと、QCM粘弾性計測システムのポータブル化にすでに成功したこと、これを用いて、実際のアッセイにおいて粘弾性挙動と蛋白質層の構造の関係を初めて明らかとしたこと、予定では28年度の研究計画であった夾雑物中のバイオマーカーの検出にすでに成功したこと、当初の研究計画の想定外の成果であるES細胞の超音波による分化誘導実験に着手したことなど、飛躍的に進行していると。
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今後の研究の推進方策 |
夾雑物中でのバイオマーカーの検出において、より有用性を示すために、実際の血清を用いて検出実験を行う。また、バイアス電場を印加したアプタマーの固定化において、安定性を向上させるためのアンテナ構造やバイアス電極構造を検討する。また、全反射蛍光顕微鏡QCMにおいて、アミロイドβ線維の融解反応に注目し、融解のダイナミクスについてより詳細な知見を得る。また、マウスES細胞の心筋細胞および脳神経細胞への分化誘導を超音波により促進する条件を系統的に探索する。また、QCM粘弾性計測により、アミロイドβペプチドがオリゴマーから線維へ構造変態する際の粘弾性挙動を研究する。さらに、アミロイドβの超音波凝集反応のさらなる加速化条件を見出し、極低濃度のペプチドにおいても凝集加速し、アルツハイマー病の早期診断に資する技術を確立させる。
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