研究実績の概要 |
本研究は、世界的にその実現が切望されている呼気診断センサの実証を目的としている。1,000 種類以上の多成分混合ガスである呼気を的確に識別するためには、センサシグナルから多数のパラメータを抽出して、超高次元データとして取得・解析する必要がある。本研究では、多種多様な受容体を利用可能な汎用性の高いナノメカニカルセンサに着目する。特に、申請者らが最近開発に成功した超小型センサ素子である膜型表面応力センサ(MSS)を軸とした簡便な測定システムを利用することで、各種のニオイデータを網羅的に収集する。ここで得られる大量のセンサシグナルを、最先端ビッグデータ解析アルゴリズムを用いて多角的に解析する。こうして、最先端のハードとソフトを連携させることで、呼気の僅かな違いも判別可能な新センサシステム構築に向けての指針を確立することを目指す。 本年度は、理論モデルを元にしたパラメータ推定による解析を進めた。センサシグナルのモデル系としては、ナノメカニカルセンサで汎用的に用いられている各種ポリマー受容体を被覆したMSSを用いて、様々な単成分ガスを測定した際に得られるセンサシグナルの再現を試みた。その結果、測定対象ガスの濃度が変化した際に観測される、粘弾性効果による複雑なセンサシグナル変化も再現可能であることが確認された。さらに、このようなセンサシグナルから物理パラメータを抽出可能な解析モデルの構築にも成功した。これにより、シグナルを特徴付けるパラメータを、動作原理に基づいて的確に抽出することが可能となった。
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