研究課題/領域番号 |
15H03589
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
高山 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 研究員 (20163321)
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研究分担者 |
安達 利一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, シニアフェロー (80141977)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロトロン / 誘導加速 / 逆磁場 / 閉軌道ゆがみ / 慣性核融合 / SiC-MOSFET / スイッチング電源 / 偏向磁石 |
研究実績の概要 |
加速器設計:昨年度の引き続き実機設計を行った。10価のフラーレンイオンを前提に入射エネルギー10MeV、出射エネルギー144MeVを可能にする逆磁場すだれを持った勾配付き偏向磁石の3次元磁場計算結果を取り込んだ2D軌道シミュレーションプログラムを駆使し軌道安定性を探す手法を確立した。長手方向の磁場分布の非一様性と(有限長を持つ偏向磁石の性質)と45度の入射・出射角の特徴から、システマティックな閉軌道ゆがみが誘起される事・それを補正するために加速に合わせて強さを変動させる補正2極磁石の装備が不可欠であることを得た。加速中のクラスターイオンビーム間での電荷交換によるビームロスの評価を行った。 要素技術の設計・開発:昨年度積み残したプロトタイプ偏向磁石の設計・製作を実施した。製作コストを最小にするため、全ての機械熱設計・電気設計を自主的におこない、励磁コイル、磁石コアの製作を別々の企業に依頼して製作した。次世代誘導加速システムのスイッチング電源のパワー半導体スイッチング素子3.3 kVSiC-MOSFETの性能テストを行い、十分に使用に耐える事を確認。バラック回路であるが、これをマウントした世界初のスイッチング電源の組み立てに着手した。 ワークショップ・シンポジウムの開催:関連分野(重イオン慣性核融合)との共催で年度末に合同ワークショップを開催し、設計の現状とその応用について議論を進めた。 論文、研究発表:国際加速器会議(IPAC2016)でのポスター発表(5月、韓国)、29回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会(6月、筑波大)での特別招待講演、国際重イオン慣性核融合シンポジウム(HIF2016、7月カザフスタン)での招待講演、第九回放射線効果に関する国際会議(REM9、10月京都)での招待講演、クラスター研究会(12月、高崎)招待講演、プラズマ・核融合専門委員会(3月、長岡)3 講演
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度磁場計算、偏向磁石設計等に参加する予定であったインドネシアからの若手研究者の来日が半年遅れたので、担当予定部分(磁場測定装置の組み立て、磁場測定、その解析)の遅れがまだ少し残っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プロトタイプ偏向磁石の磁場測定と解析 昨年度繰越金で製作したプロトタイプ偏向磁石の磁場測定装置を組上げ、磁場測定を実施する。 (2)実機サイズ誘導加速マイクロトロン最終設計 軌道補正法の確立、現在の2D軌道シミュレ―ションコードに誘導加速・閉じ込め機能を付加したコードの開発を推進する。これによる最終的な軌道安定性の評価を行う。 (3)物質が高速の巨大クラスターイオンに対して持つ阻止能評価 フランスからのこの分野の専門家がKEKに滞在。これとの共同研究にて低エネルギー域の計算高エネルギー域へどう拡張できるかの理論的研究を進める。想定するエネルギー域での信頼できる評価方法を見いだす。 (4)その他鍵となる技術開発 試験的に製作中のSiC-MOSFET誘導加速システム用スイッチング電源で加速セルを駆動する。KEKデジタル加速器にて重イオンの誘導加速実証を試みる。巨大クラスターイオン取り出し用2重真空構造のキッカーシステムの設計研究纏め (5)鍵となる技術に関するワークショップ開催 連携機関と共に巨大クラスタイオン源に関するワークショップを開催する。国・内外の研究者に集合して貰い物質と高速巨大クラスターイオンとの相互作用に関するシンポジウムを開催する。
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