研究課題/領域番号 |
15H03597
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
玉作 賢治 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, チームリーダー (30300883)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線 / 原子・分子物理 / 高性能レーザー / 量子ビーム |
研究実績の概要 |
本研究は、X線自由電子レーザーが実現して初めて利用できるようになった高強度X線と物質との相互作用を研究するものである。初年度である平成27年度は、微弱な信号を測定するために必要な大立体角・高分解能の発光分光器の設計と開発を行った。研究計画を再検討した結果、期間後半で予定していた固体の測定を前倒しすることとした。具体的なビームパラメータや理論計算、参考文献の量を考慮して試料は銅に選定した。 外殻の情報を知りたいので、変化の出やすいKβ線を測定することにした。また背面反射の配置にすることで、高分解能を達成できるようにした。これらの要件を銅に対して満たすSi(553)面を持つ湾曲結晶を7個制作した。 これらとは別に銅のKα線に使えるSi(111)面の湾曲結晶を所持していたので、その評価を行った。表面全体に渡って[111]方向の場所依存性を測定した。その結果、反射面の方位は理想的な円筒面からずれていて、湾曲結晶の分光性能にはばらつきがあることが判明した。そこで結晶の中から理想形状に近い結晶を選別して、Kα線用の発光分光器を組み上げた。さらにこれとは別に、低ノイズの新しい結晶配置の発光分光器を考案した。 発光分光器の開発と並行して、高強度X線による2光子吸収分光の実験をSACLAにて行った。直接2光子吸収過程を使うことで、双極子遷移が禁制の1s→3dが許容になるので応用展開が期待できる。測定の結果、直接2光子吸収は確認できたが、得られたスペクトルの統計精度は不十分であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Si(111)湾曲結晶の評価結果からSi(553)結晶の形状も事前に調べておく必要があると考えられる。しかし、Si(553)結晶が手に入った時には、実験を行うSPring-8が長期シャットダウンに入っていた。このため発光分光器の開発が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
早急にSi(553)結晶の分光性能を評価し、銅のKβ線用の発光分光器を完成させる。これとKα線用の発光分光器をSPring-8のBL19LXUでテストする。ここでは、複数の結晶の調整手順の確立と複数の分光結晶から別々に得られるスペクトルを合成する方法を検討する。また、SACLAの実験では限られたビームタイム内に可能な限り多くの条件でデータを得る必要があるので、調整を効率よく行わなければならない。これまでの実験では毎日集光サイズのチェックと調整が必要であった。しかし、集光調整のためには測定装置を分解しなければならず、かなり時間をロスしていた。そこで、最小限の変更で集光調整を行えるような機能を、試料チェンバに追加する。また、多角的な情報を得るために、蛍光X線のスペクトルだけでなく、吸収スペクトルの測定も検討する。
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