研究課題/領域番号 |
15H03599
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浮辺 雅宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究グループ長 (00344226)
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研究分担者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
冨田 成夫 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30375406)
藤井 剛 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究員 (30709598)
志岐 成友 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (50342796)
大久保 雅隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 上席イノベーションコーディネーター (60356623)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導トンネル接合素子 / 超伝導転移温度 / 窒化ニオブ / 原子層堆積法 / 運動エネルギー測定 / X線検出 / 原子イオン |
研究実績の概要 |
昨年度得られたALD装置により得られた膜としては世界最高の12.7Kを示す膜厚50nmのNbN膜を、1気圧窒素雰囲気で550度 200秒でアニールする事により13KまでTcを改善することに成功した。この温度は、同じ膜厚としてはスパッタ法により得られるNbNに比べても遜色ないものであった。また、そもそも超伝導薄膜では一般的に膜厚を厚くする事によりTcが上昇するため、スパッタ法で得るNbN膜で膜厚を厚くする事により16K以上のTcを得ているのと同様に、ALD装置で成膜する場合でも、今後膜厚を100nm程度まで厚くする事により、最終目的である16K 以上のTcを実現出来る目処が立ったと考えている。またスパッタにより得られたNbN/AlN/NbN多層膜を用いてNbN/AlN/NbN STJの作製を試みた。作製したSTJ素子は、リーク電流が大きくそのままでは検出器として使用できないものであったが、外部磁場に対する応答等、STJを検出器として動作させるために必要な基本特性は確認出来た。 筑波大学にあるスパッタ重イオン源(http://web2.tac.tsukuba.ac.jp/uttac/node/41)のビームラインでは、STJ素子への照射位置でのイオンビームを半導体検出器により確認し、コート材の性能評価のため行う粒子の運動エネルギー測定の準備をほぼ終了した。 しかし、産総研、筑波大学双方でSTJ素子の冷却に使用するクライオスタット2台で、それぞれ3Heリーク、磁場印加用コイルの配線不具合が発生したため、本年度はSTJ素子を用いた粒子の運動エネルギー測定を実施する事が出来なかったが、それらの修理も完了したので、H29年度中には、産総研及び筑波大学での運動エネルギー測定を再開できる見通しとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アニールにより13Kという同じ膜厚としてはスパッタ法により得られるNbNに比べても遜色ない超伝導転移温度を得る事が出来たこと、また試験的に作製したNbN/AlN/NbN STJで、STJとしての基本的な特性を確認したことで、最終目的である16K 以上の超伝導転移温度及び良好な特性のNbN系STJの実現に希望を持つことができた。更に、原子イオン照射を行う筑波大学にあるスパッタ重イオン源の整備もほぼ終了、イオン照射が出来たので、NbN系 STJの作製及び特性評価環境の整備はおおむね順調に進展したと考えているが、産総研と筑波大学の双方で使用するクライオスタットのトラブルのため特性評価自体が出来ず、残念であった。しかし現在は、クライオスタットの修理も完了したのでH29年度中に、原子イオンの運動エネルギー測定を開始できると考えている。 現時点で、コート材の評価及びフルエピタキシャルNbN/AlN/NbN 多層膜の作製条件の探索は終了していないため、若干の遅れは有るものの、それらの実施と並行してNbN系 STJ素子の作製プロセス構築は行えるため、本研究課題はH29年度中にその遅れを取り返すことが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ALD装置により成膜したものとしては世界最高の12.7Kという超伝導転移温度を実現した成膜条件で、100nmのNbN膜を成膜、H28年度に決定したアニール条件でアニールを行い、16K以上の超伝導転移温度を得る事が出来るか検証する。平行してフルエピタキシャルNbN/AlN/NbN 多層膜の作製条件探索及び、H28年度に行ったプロセスを元にNbN系STJ素子の作製プロセス構築を進める。その他、CRAVITYにて作製したその表面にコート材を成膜したNb/Al STJ 素子に、完成した筑波大学のスパッタ重イオン源(http://web2.tac.tsukuba.ac.jp/uttac/node/41)にて、3~50 keV の範囲の運動エネルギーを持つC, Au 等の原子イオンを照射し、原子イオンの運動エネルギー測定を行い、エネルギー分解能とコート材の関係の解析を開始する。高性能NbN薄膜、NbN多層膜作製プロセスやNb/Al STJの運動エネルギー検出特性などについて、得られた結果を取り纏め学会発表を行う。
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