研究課題/領域番号 |
15H03603
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石原 卓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10262495)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乱流 / 高レイノルズ数 / 直接数値計算 / 粒子追跡 / 原始惑星系円盤 / 微惑星形成過程 |
研究実績の概要 |
本研究では、非線形性が極めて強い高レイノルズ数(Re)乱流による微粒子集中促進のメカニズムの計算科学的な解明を目指している。28年度は前年度に開発・高速化した「乱流の直接数値計算(Direct Numerical Simulation; DNS)に基づく微粒子追跡シミュレーションコード」を用いて、最大格子点数2048の3乗の乱流DNS場において8×(512の3乗)個の粒子追跡シミュレーションを実施した。これにより、高Re乱流中の微粒子の運動に関して、より信頼性の高い統計量を得ることに成功した。得られた結果を用いて、粒子の衝突速度や衝突頻度が粒子の慣性(流体運動への追従性)とReに依存してどのように変化するのかについて解析し、特に、慣性の大きい粒子の高Reにおける漸近挙動を数値的に明らかにすることに成功した。また、同じサイズの粒子同士の衝突は異なるサイズの粒子同士の衝突より(1)相対速度のrms値が小さいこと、および、(2)相対速度の動径方向成分の確率分布密度の非ガウス性が強くなること、から、付着限界速度の小さい粒子同士においても付着成長しやすいことがわかった。これは、原始惑星系円盤中の微惑星形成過程における「衝突破壊問題」を解決する鍵が「乱流によるダスト粒子の集積」にある可能性を示唆するものである。これらの知見をライデンのローレンツセンターで開催された国際研究集会「Formation of the Solar System and the Origin of Life」で発表するとともに、論文としてまとめ投稿する準備を進めた。また、圧縮性乱流中のダスト粒子の運動を追跡するコードを完成させ、系統的な数値実験を行い、その結果の検証を行った。得られた知見を数値流体力学シンポジウムおよびモスクワで開催された日露ワークショップで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乱流中のダスト粒子の運動を追跡する高効率な並列計算コードを用いた大規模な数値実験により、粒子数を前年度の8倍とし、粒子の衝突速度と衝突頻度に関して、信頼性の高い統計データを得ることに成功した。また、圧縮性乱流中の粒子追跡コードも完成させ、圧縮性乱流と非圧縮性乱流の両者の乱流統計量を解析・比較することで、圧縮性乱流の差分法に基づく直接数値計算の結果を検証するとともに、圧縮性乱流および圧縮性乱流中の粒子の運動の定量的な性質の理解を深めることに成功した。さらに、粒子の付着成長シミュレーションコードの開発を進め、予備的な数値実験により、平均相対速度が限界付着速度を超えるような場合においても、付着成長し得る粒子が存在することを確認することができた。その他、乱流中の渦の微細構造と関連するストレイン場の構造を数値的に解析する新しい手法を導入し、乱流中の渦構造のレイノルズ数依存性についての定量的な特徴つけを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果をまとめ、論文として発表する。圧縮性乱流において、非圧縮性乱流と同様な数値実験を系統的に行い、圧縮性乱流中の微粒子の運動の統計的性質(非圧縮性乱流中の微粒子の運動との共通点と相違点)を明らかにする。また、粒子の付着成長シミュレーションの大規模な数値実験を実現させ、得られた知見をまとめて天文学会等で発表する。その他、乱流中の渦の微細構造と関連するストレイン場の構造を数値的に解析する手法を応用し、乱流中の渦構造と微粒子の関係について定量的な特徴付けを試みる。
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