本研究では、非線形性が極めて強い高レイノルズ数(Re)乱流による微粒子集中促進のメカニズムの計算科学的な解明を目指した。本研究では、これまでに、非圧縮性乱流の直接数値計算(DNS)に基づく慣性粒子追跡プログラム(並列数値計算コード)の開発と高速化を実施している。最終年度となる29年度は、開発した慣性粒子追跡プログラムを用いて実施した、最大格子点数2048の3乗、追跡粒子数512の3乗(×8)の一連の数値実験で得られた結果をまとめ、天体物理学の専門誌に発表した。そこでは、慣性の大きいダスト粒子の原始惑星系円盤乱流中の衝突に関係する統計量のRe依存性を明らかにし、惑星科学分野における未解決問題の一つである「原始惑星系円盤中の微惑星形成過程における衝突破壊問題」に対して信頼性の高い結果を与え、「乱流」の役割の定量的議論を可能にした。 また、乱流の大規模DNSで得られたデータを解析し、Reの増加に伴う乱流中の渦構造の遷移について定量的な結果を得て、論文として発表した(国際共同研究)。その他、圧縮性乱流の高精度高解像度差分法に基づくDNSの結果と非圧縮性乱流のスペクトル法に基づくDNSの結果を比較し、速度場の発散や密度など乱流場の統計的性質が異なる場合でも圧縮性の影響が大きくない場合は粒子の衝突統計に大きな違いが生じないことを定量的に明らかにした。さらに、乱流場のストレインテンソルの固有ベクトルを用いた解析を実施し、乱流中の渦構造と粒子の数密度の関係を定量的に特徴つけることに成功した。これらの成果は学会や研究集会にて発表した。現在、論文としてまとめ投稿準備中である。なお、本研究で開発したコードが基礎となり、ポスト「京」の萌芽課題「太陽系外惑星(第二の地球)の誕生と太陽系内惑星環境変動の解明」の受託研究「原始太陽系におけるダスト成長過程の研究」におけるコード開発へと発展している。
|