研究実績の概要 |
平成29年度は P. Scholze により近年導入されたパーフェクトイド空間との関連について, 特に応用面を視野に入れて研究した. パーフェクトイド空間は数論幾何学で生まれた概念であり, p-進コホモロジー論など様々な局面に現れるが, この研究課題のテーマであるリジッド幾何学と不可分な関係にある. パーフェクトイド空間の手法を用いて 2016年に Y. Andr'e が可換環論における難問であったホモロジカル予想 (の混標数の場合) を解決している. このように, この研究計画が現在非常に活発に研究されているエリアと重なってきたため, 研究集会「可換環論と数論幾何の新展開~ホモロジカル予想を通じて~」を 2017/6/25-26 に高橋亮 (名大多元)と開催し, 関連する研究の準備を行った. その結果, 可換環論の研究者との交流が活発化している. パーフェクトイド空間と関連した研究についてであるが, より具体的な内容としては, 研究代表者は様々な数論的多様体の flat cohomology 群をパーフェクトイド空間を用いて計算する手法を研究中である. この部分については部分的な報告を国際研究集会「Motives in Tokyo 2018」にて行っている. その過程で Kedlaya-Liu により得られているパーフェクトイド空間の基礎づけを一般化する必要が生じており, その検討も RA と共に行っている. 平成28年度までの研究も基本部分が 2018年1月に reseach monograph として EMS publishing house から出版された(加藤文元 (東工大)との共著)).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題において最も重視している「基礎理論を提供すること」については, 昨年度までの成果を含めて一巻目が出版されるに至っており, 続編も期待されている状況になっている. その基礎理論の進捗状況に加え P. Scholze のパーフェクトイド空間との関係など, 当初の予想以上に活発に研究されている領域への応用などが見つかりつつあるため.
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今後の研究の推進方策 |
流行に流されず, 「基礎理論を提供すること」を軸にしていくつもりである. しかしながらパーフェクトイド空間に関連した応用など, 取り入れるべきものはきちんと取り入れていきたい. Bhatt-Morrow-Scholze によるホモトピー的視点に立った p-進理論は今後の更なる発展が予想されるため, L. Hesselholt (名古屋大学) に研究分担者として加わってもらい情報収集に努める. また, K-理論やモチーフ理論の専門家との連携も意識し, 関連研究集会を支援し, 海外からの有力研究者を招聘・交流を行うことも予定している. 可換環論の専門家との情報交換も意識していきたい.
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