研究実績の概要 |
pを素数とし、qをpのべきとする。標数pの3次元射影空間において、Fq上定義されたq+1次のある超曲面を考え、この超曲面上にあるFq上とその2次拡大上の有理点の数と直線の数を計算し、それを利用してLefschetz pencilの断面のなす群の構造を決定した。また、このpencilを利用してこの超曲面が非有理な単有理曲面になることの1つの証明を与えた。q = 3の時はこの超曲面はK3曲面になる。Enriques曲面については、標数0においては、自己同型群が有限になるEnriques曲面のnodal曲線のなすconfigurationはI型からVII型までの7種類に分かれることが金銅誠之名古屋大学教授により示されている。昨年度、金銅誠之、G. Martinとの共同研究で、標数2の有限自己同型群を持つEnriques曲面は、nodal曲線のconfigurationにより, singular Enriquesは3種類、classical Enriquesは8種類、supersingular Enriquesは5種類に分類されるという結果を得たが、本年度は、この結果の証明の細部を詰め、80ページ余の論文にまとめ上げて投稿した。classical, supersingularな場合は標数0には存在しない新しいconfigurationが現れる。K3曲面のZariski性については, Leibniz大学HannoverのSchuett教授との共同研究で, 標数が12を法として1でない場合は, Artin不変量が1, 2の時はK3曲面がZariski曲面になることを示した。標数が12を法として1である場合も, K3曲面がZariski曲面になるいくつかの例が構成できた。これらの結果もSchuettとの共著論文としてまとめ, 投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
K3曲面, Enriques曲面など, 標準束が自明な代数曲面およびその周辺の多様体に対し, 金銅誠之,G. MartinやM. Schuettとの共同研究が進み, 共著と単著を合わせて4編の論文が作成でき(3編は査読中), そのうち1編はすでに出版された。査読中のうちの1編は80ページを越す大作であり、標数2の有限自己同型群を持つEnriques曲面がここまで分類できるとは研究を始めた当初は予想さえしていなかった。また、80万円を繰り越したが, それを用いて翌年に行った国際会議に予定通りG. van der GeerとI.Dolagchevを招聘することができ, Calabi-Yau多様体やEnriques曲面に関する詳細な討論ができた。特にEnriques曲面の自己同型群については、Dolgachevとの討論によって、Crystalline cohomologicallyに自明な群の構造に関する重要な知見が得られた。
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