研究課題
本年度は、M. Schuettと9個のcusp特異点を有するK3曲面の構造に関する研究を行ない成果をまとめて発表した(査読中)。この曲面は、translationではない位数3の自己同型を有するアーベル曲面を被覆空間として持つ。simpleなアーベル曲面がtranslationではない位数3の自己同型を持てばその商空間は常にK3曲面になること、p-rankが1のアーベル曲面でtranslationではない位数3の自己同型を持てばその商空間はK3曲面にはならないこと、標数pが5以上の場合に超特異K3曲面が9個のcusp特異点を持てば、Artin不変量が1、またはArtin不変量が2かつpが法3で2になることなどが主な結果である。証明にはsimpleなアーベル曲面の自己同型環の構造定理や格子理論を用いる。K3曲面のZariski性に関しては、Schuettとの共著として昨年度投稿した超特異K3曲面のZariski性に関する論文が受理された。また、1昨年度投稿した標数2の有限自己同型群を有するEnriques曲面に関する金銅誠之名大教授との共著論文の1編目は出版され、2編目についてはレフリーのアドバイスにより前半と後半を入れ替え、さらにconductrixを用いた部分の証明を詳しく書き直して再構成し、86ページからなるrevised versionを再投稿した。種数1のfibrationを有する曲面の多重線形系がいつファイバー空間の構造を与えるかという問題は小平次元1の楕円曲面に関しては解決済みであったが、本年度は標数3において小平次元1の準楕円曲面の多重線形系に関して考察し、まとめたものが出版された。この場合、5重以上の線形系は常に種数1のファイバー空間の構造を与え、5がこのような多重線形系の最良の値である。
1: 当初の計画以上に進展している
標数2の代数的閉体上の有限自己同型群を有するEnriques曲面のnodal曲線のconfigurationを用いた分類が完成したが、この研究プロジェクトを始めた時はこのようなことが可能であるとは予想さえしていなかった。2編合わせて全体で110ページを超える大作になった。 この結果以外にもいくつかの論文が順調に出版されている。
標数2の有限自己同型群を有するEnriques曲面のnodal曲線のconfigurationを用いた分類は完成したが、その各類のモジュライ数がまだ決定できていない。これが決定できれば、有限自己同型群の構造がすべて決定できるので、この解明に力を入れたい。そのために、Enriques曲面の種数1のファイバー空間の構造の標準形を考察中である。また、Enriques曲面の種数1のファイバー空間の重複ファイバーに含まれるconductrixを明快に計算する方法を見出すことにより、金銅誠之およびG. Martinと共同で得た結果の証明の簡易化ができないかも考察中である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Revista Matematica Iberoamericana
巻: 印刷中 ページ: -
J. Algebraic Geometry
巻: 27 ページ: 173―202
doi.org/10.1090/jag/697
The EMS Series of Congress Report "Schubert Varieties, Equivariant Cohomology and Characteristic Classes", European Mathematical Society
巻: 00 ページ: 153―157
http://www2.iag.uni-hannover.de/~schuett/publik_en.html