研究課題/領域番号 |
15H03623
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
泉 正己 京都大学, 理学研究科, 教授 (80232362)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 作用素環 / 函数解析 / フュージョン圏 |
研究実績の概要 |
Cuntz 環を使って、一般化 Haagerup 圏とそれに対応する部分因子環の分類を行った。Haagerup 部分因子環は、群論、量子群の表現論、共形場理論などから構成されない部分因子環の代表例であり、その両側加群からは Haagerup 圏と呼ばれる特異なフュージョン圏が構成される。代表者は以前の研究で、奇数位数の有限可換群に付随する方程式を導き、位数3の巡回群の場合の解から Haagerup 圏を直接構成することにより、Haagerup 部分因子環の新たな構成法を与えた。位数3以外の奇数位数巡回群についても Evans-Gannon によりこの方程式の解が次々と発見され、対応する fusion 圏(一般化 Haagerup 圏)と部分因子環も構成されていた。 この構成を偶数位数の有限可換群に一般化することに成功し方程式を導出した。その結果、最近発見された指数 3+√5の部分因子環の多くに統一的な構成を与えた。また得られた方程式の解が一般化 Haagerup 圏を完全に分類することをを示し、位数が小さい群に対して解の完全分類を行った。また対応する部分因子環の双対主グラフの決定を行った。奇数位数の場合と違い、偶数位数の場合には方程式がより複雑なる一方で、方程式の対称性が高くなるためその解から多様な性質を持つフュージョン圏が得られることが分かった。また方程式の対称性と2次コホモロジー群に関する情報から、一般化 Haagerup 圏の外部自己同型群を決定する方法を得た。群論的なフュージョン圏以外で外部自己同型群の構造が知られているフュージョン圏の例はほとんどなかったため、このような一般的結果は貴重である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したように、部分因子環とフュージョン圏の分類に関しての研究は大変順調に進展しており、既にこの研究は分野に大きな影響を与えている。例えば、近年 Scott Morrison 等により指数3+√5の部分因子環で中間因子環を持たないものが4つのみ存在することが証明されていたが、その証明は各々の場合ごとの計算でありコンピュータによる計算量も大変多いものであった。一方研究代表者の方法では、位数4の群(2つ存在する)に関する方程式を解き、さらにそれぞれに解の対称性の成す群により同変化あるいは脱同変化を行うとい統一的な方法により統一的に構成されており、コンピュータによる計算も必要としない。また過去に行った、Noah Snyder と Pinhas Grossman との共同研究により、位数8の群に関する方程式を解くことにより、Asaeda-Haagerup 部分因子環を再構成でき、さらにこれを使えば Asaeda-Haagerup 圏の Drinfeld 中心が計算できることもわかっている。分野に大きな影響を与えた結果が得られたといことからも、研究は順調進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最初に着手すべきことは、Drinfeld 中心の計算である。一般化 Haagerup 圏の Drindfeld 中心のモジュラーデータの試験的計算を行った結果、大きくわけて5つのパターンに分類される強い兆候が現れた。まずより多くの試験的計算を Pinhas Grossman と共同で行い、予想されるモジュラデータを具体的に書き下すことを行う。一番簡単な構造を持つものは、研究代表者が以前構成した、奇数位数の可換群に付随する near-group 圏との関係が強いことがわかっている。しかし他の4つのパターンのモジュラーデータは、near-group 圏でも一般化 Haagerup 圏でもないより一般の2次圏の族との強い関係が予想されるため、これらの新たなフュージョン圏の研究にも着手する。
松井宏樹との poly-Z 群の Kirchberg 環への作用に関する共同研究を再開し、現在 Hirsch length 3まで完成している分類定理を一般的に証明する。近年専門家の大きな注目を集めている Dadarlat-Pennig による strongly self-absorbing C*環に関する Dixmier-Douady 理論は、本研究と密接な関係を持つ。より具体的に、「Poly-Z 群の分類空間の場合に一般化 Dixmier-Douady 不変量がすべて群作用により与えられる」という予想を考察したい。この予想は次元が3次元以下の場合は、我々の既に得られている結果がら従うのではないかと思われる。
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