研究課題/領域番号 |
15H03624
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
重川 一郎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00127234)
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研究分担者 |
矢野 孝次 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80467646)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 確率解析 / マルコフ半群 / エルゴード性 / マルコフ過程 / スペクトル / 超縮小性 / 対数ソボレフ不等式 / スペクトルギャップ |
研究実績の概要 |
対数 Sobolev 不等式と、Zygmund 空間の L log L 型のノルムと密接な関係にあることは形の上の類似性から予想されるが、実際に Zygmund 空間の枠組みでのスペクトルギャップを導くことが出来た。さらに Kummer 作用素の場合にスペクトルを完全に計算することにも成功した。L^2 の場合と違って、連続スペクトルが出てくるなど、特別な構造を持っていることも分かった。こうした現象は、さらに一般化の可能性も示唆しているものと考えられる。 1次元拡散過程のスペクトルに関しては、その構造の単純さから、スペクトルを完全に決定できる場合がいくつも知られている。古典的によく知られている場合もあるが、超対称性を利用した生成作用素のスペクトルの解析に関しては、Kolmogorov 拡散過程に対して統一的な理解が可能であることが分かってきた。例えば、Kolmogorov 拡散過程に対しては、Feller の意味での標準測度が Pearson 密度 ρ になることが知られている。そこから拡散係数 a と組にして自然に2パラメーターの族が導入できることが分かった。それから特に Feller の標準測度と尺度関数を使った表現による超対称性との自然な対応も付けることが出来る。これらを利用してスペクトルの解析をさらに進めていくことを目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zygmund 空間の枠組みでのスペクトルの解明は、Kummer 作用素の場合が完全に解明できたので、一定の成果は上がっていると言うことができると思う。さらに Orlicz 空間の枠組みに広げることも可能ではないかと思われ、その足掛かりが出来たと言えるだろう。 Kolmogorov 拡散過程に対して、Feller の標準測度と尺度関数による超対称性と、Stein の超対称性など、各種の対称性の枠組みを明確にすることができた。これらを基礎としてそれぞれのクラスの生成作用素のスペクトルの統一的な理解を目指しての展望が出来てきたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
Kummer 作用素の対する Zygmund 空間におけるスペクトルが決定できたので、次の段階としてOrlicz 空間の場合に拡張する。 Kolmogorov 拡散過程に対して、スペクトルの分類を完成させたい。大きく6つのクラスに分けられるが、いくつかは古典的によく知られている直交多項式理論によって記述される。すでに知られている結果も含め、全体を見渡せるような統一的記述を目指していく。Feller の標準測度と尺度関数による超対称性と、Stein の超対称性など、関数解析的な枠組みを有効に利用していきたい。
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