研究実績の概要 |
(a) 楕円超幾何函数の差分 de Rham 理論:楕円超幾何函数に関する差分 de Rham 理論の出発点として,伊藤雅彦氏(東京電機大学)とBC 型の多重級数と多重積分の和公式に関する共同研究を行った.両者に共通の差分 de Rham 理論の代数的枠組みを設定し BC 型基本不変式(楕円補間函数)を用いてパラメータに関する差分方程式を導出した.これに級数の境界条件及び積分の特異性についての解析的考察を加えて,多重級数と多重積分の和公式の新証明を得た. (b) 楕円差分 Painleve 系の研究:山田泰彦氏(神戸大学・分担者),梶原健司氏(九州大学)との共同研究により,楕円差分 Painleve 方程式とその退化をP1xP1 の8点の配置空間によって定式化し,アフィンWeyl 群の表現, 差分方程式, Lax 形式, 超幾何型特殊解についての系統的記述を与えた.その成果は共同執筆の J. Phys. A に概説論文として掲載予定である. (c) Ruijsenaars 系に関わる特殊函数:星野 歩 (香川高専),白石潤一氏(東京大学)との共同研究により Askey-Wilson 多項式に関連したq超幾何級数の新しい変換公式を導き, 小森・野海・白石の核函数関係式(2009) を利用して,B,C,D 型の行型 Macdonald 多項式に対する明示公式(Lassalle の予想)の証明を与えた.またその応用として,白石氏,Boris Feigin 氏(ロシア国立研究大学経済高等学校) 等との共同研究により,C,D 型の行型 Macdonald 多項式に対する新しいタブロー表示を証明した.このタブロー表示は変形 W 代数の相関函数から示唆されたものである.
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