研究実績の概要 |
本研究では,(a) 楕円超幾何函数の差分 de Rham 理論, (b) 楕円差分 Painleve 系の研究, (c) Ruijsenaars 系に関わる特殊函数, を3つの基本課題として楕円差分の可積分系に関連する特殊函数の研究を行なった. (a) BC型の Selberg 型一般楕円超幾何積分に対して, 楕円超幾何積分による2次形式を考察し,その行列式を楕円ガンマ函数とテータ函数を用いて表示する新しい行列式公式を得た.これは BC 型楕円 Selberg 積分公式の拡張を与える.また G2 型の楕円 Selberg 積分の求値公式の予想を解決した.これらはいずれも,楕円超幾何積分への q 差分 de Rham の方法の応用として得られたものであり,BC 型の楕円超幾何積分の研究では Lagrange 型補間函数が中心的な役割を果たす.(琉球大学・伊藤雅彦との共同研究) (b) E8 型楕円Painleve方程式に対する 山田のLax 形式と van Diejen の BC1 型の楕円差分作用素との関連を明らかにした.van Diejen の差分作用素は,山田の Lax 方程式の差分作用素の見かけの特異点の合流によって得られる.(Leeds 大学・Simon Ruijsenaars, 神戸大学・山田泰彦との共同研究) (c) Ruijsenaars 系の形式的固有函数として,Macdonald 多項式及び一般の複素ウェイトを主要項とする Macdonald 関数の p 変形の構成を行なった.また,白石の非定常型 Ruijsenaars 函数と無限変数の Macdonald 函数の関係を明らかにし,その応用として非定常型 Ruijsenaars 函数に対する収束定理を証明した.(スウェーデン王立工科大学・Edwin Langmann, 東京大学・白石潤一との共同研究)
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