研究課題/領域番号 |
15H03634
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 一之 東北大学, 理学研究科, 教授 (70188291)
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研究分担者 |
横山 啓太 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (10534430)
木原 貴行 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (80722701)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数学基礎論 |
研究実績の概要 |
昨年度と一昨年度に次の5つの小課題に分けて進めてきた研究の諸成果を精査し,課題間の交流や合流の可能性を検討して,研究全体をより一層ダイナミックに発展させられるように今後の方針を策定しながら研究を遂行した.1. 証明可能性の相転移.代表者の研究室の学生と元研究員Pelupessyは,Paris-Harringtonの定理などにパラメタを挿入した命題について証明論的強さを調べ,その相関分析をほぼ完成した.2. 逆数学と超準的手法.体系WKLoに対し自己埋め込み定理を応用した代表者の超準的方法は,そのまま他の体系に一般化できない.最近EnayatとWangは,Avigadによる強制法の翻訳を用いた新技術を開発した.これにより,指標関数を用いた保存性証明から具体的な証明の書き換え手続きを得る見通しが立ち,ラムゼイの定理や採集原理を用いた証明を変換する方法も可能になってきた.3. 超臨界命題.無限ゲームの決定性(必勝法の存在)は,通常の体系で真偽が判定できない超臨界命題の代表であり,近年米国で高階逆数学による分析結果が多く得られた.それらの仕事と,ヨーロッパで盛んなモデル検査の技法を融合した研究を開発中である.4. 乱択計算における Yaoの原理は,どんな乱択アルゴリズムも,最悪の入力分布に対しては,決定性アルゴリズムの期待値よりも効率良くならないことを示すものである.本年度は,より一般的な木構造や重み付きの木に対する乱択クエリ複雑性について検討した.5. 旧来の逆数学と構成的逆数学を統合する視点において,定理の一様計算可能性を測定する道具であるWeihrauch束が有用であり,新しく分担者に加わった木原は開ゲームの決定性,完全集合定理などを Weihrauch 束を用いて分析した.以上の結果の発表と討論の場として,9月にCTFM 2017 (シンガポールNUS)を共同で開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度まで5つの小課題に分けて研究を進めてきたが,そのうち2つは完成度が高いため,残る3課題を中心として課題構成を組み直し,併せて新しい分担者を加えて,一層ダイナミックな発展を続ける.
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今後の研究の推進方策 |
課題構成を以下のように組み直し,ダイナミックで効果的な発展を目指す.1. 逆数学と超準的手法.EnayatとWangが開発した強制法の翻訳を用いて,指標関数を用いた保存性証明から具体的な証明の書き換え手続きを与え,ラムゼイの定理や採集原理を用いた証明を帰納法公理のみを用いた証明に多項式サイズで変換する手続きを開発する.2. 超臨界命題.無限ゲームの決定性(必勝法の存在)は,通常の体系で真偽が判定できない超臨界命題の代表である.開ゲームの決定性などを Weihrauch 束を用いて分析し,異なる原理に分裂する.3. ゲームの超臨界性が研究される一方,ゲームの動作の定義を制限することで,決定性が計算可能になることもわかっているので,この結果の精密化をμ計算との関係で調べる.以上の3課題を遂行しながら,最終年度に向けて研究全体の総括も行っていく.
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