研究課題/領域番号 |
15H03638
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
梅村 雅之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70183754)
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研究分担者 |
高橋 労太 苫小牧工業高等専門学校, 理系総合学科, 准教授 (40513453)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙物理学 |
研究実績の概要 |
代表者と分担者は共同で,一般相対論的輻射輸送計算コードの開発を行った。このコードは,代表者らが開発した非相対論的な6次元輻射輸送コードARTの計算手法を,一般相対論的な時空計量に適用したものである。ブラックホール時空としては,Kerr時空を用いる。Kerr時空を記述する座標系としては,Boyer-Linquist座標とKerr-Shild座標があるが,Boyer-Linquist座標は,地平面が特異面となる座標系であるため,光が地平面に近づくにつれて,時間が進まなくなる。この結果,地平面近くでの光の軌跡を追うことが事実上困難になる。一方,Kerr-Shild座標の場合は,有限時間で地平線を横切る光線を扱うことができ,地平面内に吸い込まれる光と地平線付近を周回して脱出する軌道を同時に解くことが可能となる。本研究では,Kerr-Shild座標を用いて,共変形式の輻射輸送方程式を解いた。この輻射輸送コードは,測地線に沿って光の軌跡を時間依存で解くため,因果律が厳密に満たされ,光線の湾曲,時空の引きずり,重力赤方偏移等の一般相対論効果を正しく扱うことができることが確認できた。また,これまでの近似法のように波面の衝突は起こらず,波として交差することが可能である。さらに,因果律を保つような散乱過程の実装も行い,ブラックホール周りを回転する光源からの波面の伝播テスト計算で,正しい振る舞いが得られることを実証した。これらの成果は現在論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kerr-Shild座標を用いた一般相対論的輻射輸送計算コードの開発において,因果律が厳密に満たされ,光線の湾曲,時空の引きずり,重力赤方偏移等の一般相対論効果を正しく扱うことができることが確認できた。また,波面の衝突は起こらず,波として交差する計算が可能である。散乱の取り扱いが懸案であったが,因果律を保つような散乱の計算法を実装し,ブラックホール周りの波面の伝搬テストで正しく解けることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
散乱を含めた一般相対論的輻射輸送計算コードが出来上がったので,これをさらに改良し,光学的に厚い領域と薄い領域とを分けて扱うことができるようにする。超臨界降着流の計算においては,光子捕獲が起こる光学的に厚い領域と光子の脱出が起こる光学的に薄い領域を同時に扱う必要がある。光学的に十分厚い領域では,光子は多重散乱によって拡散する。一方光学的に薄い領域に入ると,平均自由行程以内で光子は脱出する。これまでのFLD法(フラックス制限拡散近似)では,光学的に薄い部分の輻射輸送は解かず,フラックス制限関数によって近似してきたが,我々の方法はこのフラックス制限近似の部分を輻射輸送計算に置き換えることに対応する。一般相対論的なFLD近似については,先行研究で定式化が行われている。共変形式の輻射拡散の部分と,我々が開発した共変形式の輻射輸送計算コードを結びつけ,光学的厚さの広いレンジに渡って適用可能な一般相対論的輻射輸送計算コードが完成する。そして,大局的な一般相対論的輻射輸送計算で得られた局所ローレンツ系でのエディントン・テンソルをテトラド変換により曲率空間(リーマン空間)へ移し,一般相対論的流体方程式と結合することで,一般相対論的輻射流体コードを開発する。
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