研究課題/領域番号 |
15H03640
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 央明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00311184)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 天文 / 太陽物理学 / プラズマ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、太陽彩層における、プラズマ・磁場・放射が織りなす物理現象について数値シミュレーションを用いて解明し、Solar-C衛星計画のための理論的裏付けを準備することを目的とする。具体的には、非局所熱力学平衡状態の輻射輸送を含む多次元磁気流体シミュレーションコードを構築し、(1)彩層中の波動生成・伝播・熱化過程や、(2)スピキュールと呼ばれるジェット現象の解明、(3)彩層加熱の問題に挑む。 2015年度は、以下の個別課題につき研究を実施した。「彩層波動伝播の1次元シミュレーション」を実施した。まだ放射過程は入っていないが、いくつかの知見を得ることができた。遷移層での反射率については、遷移層での反射が高いいっぽうで、光球下端でのそれは小さくほとんどの波動が抜けてしまうことを示した。また、非線形波動発展について、直線偏波Alfven波について突っ立ちから3波共鳴的過程による反射過程を新たに見出し、査読論文を出版した。「プロミネンス形成」については、2次元シミュレーション結果を査読論文出版するとともに、派生研究としてプロミネンス内部で発生する見かけ波動についての共同研究を行いこちらも出版した。「スピキュール再現の多次元シミュレーション」については、2次元計算について研究を実施、先行研究では実現できなかった背の高いスピキュール再現に成功し、コロナ密度・磁場への依存性を調べて、その加速機構を明らかにした。この結果は査読論文として出版した。また3次元への拡張も順調にすすんでおり、論文執筆準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた個別課題のうち「1次元NLTE輻射磁気流体コード開発」は既存コードに技術的な難点があること(具体的には数値拡散が大きく波動伝播の計算にあまり適しないこと)がわかった。独自コードを開発する方針に転換したため、予定よりやや遅れ気味となっており、引き続き開発作業を続ける。「スピキュール再現の多次元シミュレーション」課題は、予定より速く研究が進んでおり、3次元シミュレーション結果が既に出ている。その他の課題は概ね予定通り進んでいる。以上、課題により遅い速いはあるものの全体としては概ね予定通りと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。上に述べたようにNLTE輻射磁気流体コードについて独自コードをほぼ最初から開発することになりそうだが、今後の研究展開の必要性を考えると、ブラックボックス部分がなくなり、この方針転換は必ずしも悪くないと考えている。それ以外の課題については予定通り進めていく。
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