研究課題
宇宙X線観測のための、高速低雑音信号処理ASICおよびCCD/CMOSカメラシステムを新規開発するにあたり、今年度は、「ひとみ」衛星搭載CCDカメラ用のエレクトロニクスを、新規開発した小型CCD 素子と接続するカメラシステムを構築した。次に、従来の大型素子と同等の仕様をもつ小型素子を用いてデータを取得し、評価することでシステムの検証を行った。2つの小型素子についての評価から、暗電流や電荷転送効率の値は従来の大型素子と比べて数倍悪いものの、エネルギー分解能と読み出しノイズは匹敵する値であることがわかった。次期衛星搭載素子の導入に向けて、電荷転送効率と可視光遮断性能をはじめ、エネルギー分解能や読み出しノイズ、暗電流など主要な撮像分光性能指標を安全に評価するシステムが完成した。このシステムを用いて、新規開発したCCD素子の初期動作試験を行った。電荷転送効率の向上と、ピンホール数の低減を図った素子であるため、その2点を重点的に測定した。その結果、従来型大型素子と同程度の性能であった。これは、新規開発素子にもまだ改善の余地があることを意味しており、さらなる改善策を検討している。また、科学衛星で用いられる通信規格SpaceWireと、超小型衛星で用いられる通信規格RS422を変換する基板を製作した。この2つの通信規格は、通信速度が異なるため(SpaceWire最大400Mbps, RS422 最大38400bps)、損失なくパケットを送受信するために、バッファリングの機能を搭載した。この基板では、およそ1000倍の速度差の調停を行う。現在性能評価中である。
2: おおむね順調に進展している
高速低雑音向けASICは既に完成しており、残るは分光性能に優れたCMOS/CCDセンサの新規開発が主眼である。カメラシステムとして重要なエレクトロニクスと、従来型CCDセンサとの接続試験が直近の課題であったが、これをクリアすることが出来た。今後、超小型衛星搭載を考えた場合、デジタルエレクトロニクスの開発という点で、性能評価中の基板が完成すると、搭載機器としての完成に大きく近づく。
今後は、デジタル基板(Spacewiew-RS422変換基板)の性能評価の完了と、CMOS センサの性能評価が課題である。後者については、性能評価に必要なX線源や真空装置・冷却装置はすでにあるため、センサの購入と初期動作試験が直近の計画である。その後、放射線耐性評価などを経て、人工衛星搭載機器としての試験に移行する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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