研究課題
本研究課題の中心テーマである活動銀河核ジェットのミリ波偏波VLBI観測を、日韓VLBIネットワークにより可能にするために開発が必要なVERA(天文広域精測望遠鏡)搭載用の43GHz(ギガヘルツ)帯周波数コンバーターの製作と、広帯域受信を可能にするために必要なOCTAD(広帯域アナログデジタル変換装置)の導入を本2年度目に実施した。周波数コンバーターはVERA水沢局と入来局20m鏡に設置する予定である。本年度は2台の製作を完成させて両局の20m鏡に設置する予定であったが、本年度はその内1台の完成と水沢局20m鏡内への試験的な設置までしか到達出来なかった。周波数コンバーターに関しては、性能評価では概ね問題はなく今後は2台目を完成させて、各2局に設置して遠隔運用可能な状態にしていく。一方、OCTADは入来局へ設置する予定であったが、今年度はメーカーでの製作と性能評価後、国立天文台に納入するまでで作業は終了となった。一方で、東アジアVLBIネットワーク構築のための試験観測が、22・43GHz帯で実施されており、中国、韓国のVLBI観測局を取り込んだイメージング性能の評価観測が開始された。VLBI観測データの偏波データ相関処理を進めるために、国立天文台水沢VLBI観測所に設置されたソフトウエア相関器に偏波処理機能を付加することを計画している。今年度は短時間の試験データを利用しての相関処理に成功した。今後は、長時間のVLBI観測により得る実データで試験処理して、性能評価を進めていくことになる。研究代表者の成果として、活動銀河核(AGN)NGC4945のサブミリ波帯水メーザーの観測をアルマ望遠鏡で実施した成果を査読論文に出版した。ジェットが生成するとされる降着円盤周辺領域から1千-1万倍程度離れた領域にある高密度分子ガスからの321GHz帯水メーザーの検出は2例目である。今後は空間分解能を上げた観測で構造の空間分解に挑んでいく。
4: 遅れている
H28年度は、2台の43GHz帯周波数コンバーターの製作と性能評価を終えてからVERA水沢・入来局20m鏡へ搭載する予定であった。さらに、同2局間で電波干渉試験観測を実施して干渉計としての偏波観測システムの性能の検証を予定していた。現状では、43GHz帯周波数コンバーターの製作自体が遅れ、1台目を完成させた後に2台目の製作にただちに移行できず、干渉計としてのシステム性能評価が年度内にできなくなった。また周波数コンバータをより安定的に作動させるために必要な機器・部品がさらに要求されることが製作途中に判明した。望遠鏡内への周波数コンバータの設置に関して国立天文台側と緊密な連絡を取りつつ進めているが、年度内に残りの部品等を確保し組み立てて、望遠鏡内での設置作業までを全て終えることができなくなった。以上の結果、43GHz帯左右両偏波受信システムをVERA水沢・入来局20m鏡にて完成させた後、試験観測に漕ぎ着けるまでに1年弱程度の遅れが現時点で予見されることになった。
今後は、43GHz帯左右両偏波同時受信機の後半部である周波数コンバーターの製作・性能評価を2台分全て完了させ、VERA水沢・入来局20m鏡に設置することが喫緊の課題である。その後、水沢と入来局の2局間でVLBIとしての電波干渉試験観測を実施する。43GHz帯で左右両偏波同時にフリンジ(干渉縞)を検出することと、取得したデータが国立天文台水沢VLBI観測所のソフトウエア相関器で正しく偏波相関処理できるかどうかの最終的なチェックを行う。上記試験の実施後は、VERA2局と韓国VLBIネットワーク(KVN)3局間の計5局間での電波干渉実験を行い、統一したVLBIシステムとしての性能評価を実施し、問題点があれば洗い出して対応していく。年度中に2局目の偏波受信機の製作が間に合わない場合は、VERA水沢1局とKVN3局の計4局で、試験観測を先行実施していくことも検討している。年度後半の冬期観測シーズンに向けた科学試験観測に備えて観測スケジュール等の準備も進めていく。現状では予定より1年弱程度の遅れが出ているが、43GHz帯受信機開発の遅れをあらかじめ考慮した研究計画を立てていたため、全体として4年間での計画遂行に大きな影響はないと見込んでいる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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